PACIFIC WAY

巻頭言・国際シンポジウムの開催

小林泉(こばやしいずみ)


 21世紀の幕開け、本研究所は外務省との共催で国際シンポジウム「21世紀における太平洋国家の連帯」を開催する。2月6日、7日、会場は大阪の国際交流センターで、島嶼諸国からはフィジーのカミセセ・マラ前大統領、パラオのクニオ・ナカムラ前大統領、パプアニューギニアのマイケル・ソマレ初代首相をはじめ、地域のリーダー総勢9名を招く。これに対し、日本側からも10名以上の有識者らが参加し、二日間にわたって日本と島嶼諸国の今後の交流のあり方を討論する。

 このシンポジウムは、昨年春に宮崎で実施された「太平洋・島サミット」のフォローアップの一環として行われるものだが、この事業の主たる意義を挙げれば次の三点に集約できるだろう。

 その第一は、かつてない会議の規模である。過去二回にわたり日本で開催された「島サミット」は、SPF諸国(現PIF)16カ国と日本との政府間首脳会議だったが、民間レベルで島嶼のトップリーダーたちがこれだけ多数参集するのは、日本ではこのシンポジウムが初めてだ。日本で島嶼地域が注目される機会は少ないが、一般市民の島々への関心喚起には絶好の場となるだろう。そのためシンポジウム会場の外側で、島々を紹介する「島フェスティバル」をも同時に開催し、市民への一般参加を呼びかけている。

 第二は、この会議の討議テーマである。ここでは日本と島嶼地域との関係のあり方を、歴史的、文明史観的な観点から俯瞰し、地域連帯の方向性を導き出そうとする。何かを決議するとか、懸案事項を解決するといった具体的成果など期待していない。島嶼諸国と日本の間に特別な問題が起きているわけではないのに、島嶼地域と日本が如何なる友好関係を築いていけるかといった抽象的テーマで島嶼のリーダーたちが日本に集まってくれる。何より知的交流を維持するのが狙いだ。域内国家であるオーストラリアやニュージーランドとは比べようもないが、日本が太平洋国家として島嶼地域との連帯を志向するには、こうした機会の積み重ねこそ重要だと言っていい。

 第三は、開催地が歴史と文化の薫り高い関西地域の大阪であること。私は常々、大きな国際会議はできるだけ東京以外の地で開催されるのが望ましいと考えていた。国家的に重要であればあるほど、それを地域住民に直接感じ取ってもらえるチャンスが大きいし、外国からの参加者にとっても日本人との交流を実感しやすいからである。この度は、東京に次ぐ巨大都市大阪での開催となったが、大阪府、大阪市、さらに関西財界の諸団体が一丸となってシンポジウム参加者を歓迎する体制を整えてくれた。こうした「かたち」の実現こそが、この事業が目指す大きな意義の一つなのである。

 準備を進める過程で、太平洋島嶼地域に関連する、あるいはこの地域を事業対象に含んで活動している団体が関西地区に10を超える数で存在する事実を知った。小さいが地道な交流活動が、市民レベルで展開されているのは頼もしい。これらを束ねているのが関西国際交流団体協議会で、この協議会を中心にした諸団体がシンポジウムを盛り上げるために様々な惜しみない協力をしてくれた。我々の事業主催パートナーとして大阪事務局を引き受けてくれた財団法人大阪国際交流センターもまた強力な助っ人だった。こうした沢山の人々や団体の連携により、このシンポジウムの準備が進められているのも地方開催のメリットだろう。あとは当日のシンポジウムを、より充実した中身の濃いものにしていくばかりである。

 これだけ島嶼の有力者が一度に来日するのだから、会合を大阪だけで終わらせるのはもったいない、そう考えるのは私だけではなかった。そこで、太平洋経済協力会議日本委員会との共催で、2月9日に東京でもセミナーの開催を計画した。

 こうした活動が21世紀の初頭に行われることで、今世紀における日本と島嶼地域の緊密な関係進展の弾みになってほしい。国家間関係といえども、その基本は人同士の信頼関係の積み重ねが重要になるからである。