ドメイン名販売事業は、すでにニウエ(「.ne」)やトンガ(「.to」)で行われており、ビジネスとして順調な成績を収めている。
このように、ドメイン名そのものがビジネスになることが実証されつつある中で、一部の政府は、ツバルのようにこれを国家収入源としようとの動きを見せている。しかしながら、じつはドメイン名の管理は、必ずしも政府や政府関係機関に限られていないため、一部の国ではこれまでドメイン名を管理していた団体からその「権利を奪う」必要が生じている。
たとえばニウエでは、今年3月1日、政府が臨時議会を招集して「.ne」を国家の資源と定めるための法案を提出、これが可決されて「.ne」が「国有財産」となった。ニウエでは、現在民間のIUS-N社が「.ne」を管理しており、ニウエ政府としてはこの立法措置によりIUS-N社と協議を開始し、「.ne」の販売益などを国庫収入に当てたい考えである。またすでにピトケアン島も「.pt」を公有化している。
一方アメリカンサモアでは、現在「.as」のドメイン名をカリフォルニア在住のアメリカンサモア人が管理しているため、ドメイン名管理の国際団体であるICANN(Internet
Corporation for Assigned Names and Numbers)の国際会議に使節を派遣し、「.as」のドメイン名管理を政府ないし政府指定の機関に再割り当てするよう求めた。
ドメイン名販売などのインターネット関連のニュービジネスは、素人には極めて理解しにくいところであるが、日々進歩を続けているIT革命の中で、情報とアイディアさえあれば、一攫千金も夢ではない。ニウエでは数年前にインターネットを使ったバーチャルカジノ事業を計画し、この利益だけで国家の歳入をまかなえると夢見たこともあった。またツバル同様、FSMの「.fm」もFMラジオ局を中心とした潜在的需要があると予想でき、筆者はこれがFSM国家財政を大きく潤す可能性があると考えている。今のところ「.fm」に関しての報道はみられないが、すでに何らかの動きはあるのかもしれない。
情報技術とそれを基礎とした昨今のインターネットビジネスは、太平洋島嶼諸国の抱える辺境性とか極小性とかいった経済開発のネックとはほとんど無縁な存在である。IT革命は、現物経済で国際競争力に乏しく、経済開発に苦しんでいる太平洋島嶼国に、アイディア次第では突如巨万の富をもたらすビッグチャンスなのかもしれない。と同時に、ベンチャービジネスだけに提携先の信用調査が難しく、ツバルがかつてひっかかったような怪しげな会社がアプローチしてくる可能性もある。事業を考案したりシステムを立ち上げたりすることができる情報技術専門家の育成は、各島嶼国の人材育成面で、最重要分野といえるかもしれない。
(小川 和美)