PACIFIC WAY

太平洋安全保障の推進(試訳)
  (ENHANCING PACIFIC SECURITY)
   ロン:クロコム(Dr. Ron Crocombe)

訳:(社)太平洋諸島地域研究所研究員
山桝加奈子(やまます かなこ)


 このクロコーム論文は、昨年の6月13日〜15日に開催されたフォーラム地域安全保障委員会(FRSC)に提出されたものである。現在の南太平洋地域のかかえる広い意味での安全保障上の諸問題と、フォーラムの今後の南太平洋の安全保障活動の指針を示唆する重要な論文であると考えられる。ほぼ全文にわたり訳出して会員各位に御紹介するものである。
 
要 約
 
 地域や、内包する脅威の認識の多様性にもかかわらず、安全保障問題には多くの一致点がある。
 域外からの軍事的脅威は存在するが可能性は低い。
 域外からの犯罪の脅威(国際金融犯罪、麻薬や物品、めずらしい植物や鳥類の密輸、不法移民)は深刻で、エスカレートしつつある。
 域内の脅威は一般に最も深刻だと考えられている。過去20年間の太平洋地域での紛争の例は、民族間の緊張(太平洋諸島民同士、または島民と移民の間)、土地所有権紛争、経済的不均衡、政府の問題解決能力に対する信頼の欠如などの諸問題の組み合わさったものである。これらの諸要素は通常、安全の崩壊が起こる前に存在しているので、注意を払う価値がある。
 自然災害を除いて、危険な状況が突然起こることはほとんどない。それらは突然引き金が引かれるように見えるが、原因は長い時間をかけて生じる。フォーラムは、すでに噴出した問題の管理への注意を怠らずに、さらに、それらが手におえなくならないように、拡大しつつある問題にも予防的に同等の注意を払うことを望むだろう。
 この地域は、法執行の各分野(警察、慣習、移民、刑務所、法律業務など)の調整機関を有しているが、FRSCはそれらを、地域的関連組織と共に、フォーラムに連結させた。しかしすべての「安全保障」問題は基本的に「誠実さ」の問題である。法執行側では、一般社会によって定められた、最少限の基準を守らせることに関心を持っており、倫理側では、高い基準を個人にゆだねることに関心がある。後者が達成される限り、前者は起こらない。主な焦点は法執行の上にあることは理解できる。なぜなら、法執行は、われわれの直面した危機に対処するからである。しかし、おそらくわれわれは、誠実さにも同じくらいの注意を払うべきである。なぜならほとんどの人間が、いつも自発的に倫理的に振舞わない限り、法執行は結局はうまくいかないからである。オセアニアカスタム協会がそれを先導している。その先例はより広いプログラムの基礎となるにちがいない。

安全保障の目的は?
 
 広い意味で、みな同じ目的を共有しており、
 1.平和(破壊的な紛争のない状態)
 2.発展(収入、教育、健康(医療)、その他のサービスの増進)
 3.繁栄(よりよい商品とサービス)
 を望んでいる。これらの目的はある程度、互いに依存している。この報告書は、これらの目的を追求していくことにより安全保障が推進される過程に関心を持っている。
 この地域の人々から情報、観察、意見、重要な知恵が提供される。彼らの多様な貢献はとても感謝されているが、多くは名前をださずに意見を表明しているので誰によるものかはわからない。
 意見の聞き手(相談される人)は政府や政府内機関の当局者や、非政府団体、研究機関などである。私もまた偶然に接触したいろいろな階級の人々の問題を提起した。それらの人々の認識はやはり興味深く、適切である。
 加えて、私はこの話題の多様な面について、多くの報告書や出版物を読み、さらにこの依頼を受ける前に、安全保障問題を扱っている自分の新しい著書を出版した。
 この仕事には、ミクロネシア連邦、フィジー、パプア・ニューギニア、トンガへの短期間の訪問を入れて、6週間の期間が与えられた。私はクック諸島に住んでおり、ソロモン諸島を他の仕事で訪れたことがあり、いくつかの協議はこれらの国で行われた。
 そのような問題への完全な解決というものはなく、この調査の間、目的や戦略についてきわめて多様な認識が述べられた。しかしながら、全般的な方向性については多くの一致が見られた。意見は国家間よりも、国内でのほうが分かれている。
 安全保障はそのようにあいまいで漠然とした言葉であり、多くの意味を持ちうる。おそらく最も基本となる意味は「危険からの自由」であるが、それはあまりに多くの解釈を許す。広く定義すると、フォーラムの活動はすべてカバーされる。1997年のフォーラムリーダーによるアイツタキ (Aitukaki) 宣言は、その言葉に広い定義を与えた。(しかし)短い報告書の中では、選択的であるべきである。このレポートでは一連の見解の統合を試みており、最終的な選択や提示に、私は責任を持ちたい。
 
国家的安全保障

1. 誰のための安全保障か?
 安全保障の利益や安全保障に対する認識は大きく異なる。たとえばブーゲンビルの場合は、パプア・ニューギニア政府の見解とブーゲンビル独立派の見解があっただけでなく、それぞれの内部やまったく別の分野からも、さまざまな意見や関与があった。ニューカレドニアや他の地域でも同様である。ある人に脅威として見なされたものは、ほかでは解決として受け取られる。しかしすべての派が求めているのは、平和であり発展であり繁栄である。議論の焦点はそれらを達成するための最良の方法についてである。
 
2. 何が脅威なのか?
 この調査の間、地域内の6カ国の人々の討議で、ほとんどの人は、脅威の言葉を外国の軍隊による暴力的脅威としてではなく、ゆっくりひろがる要素(たとえば、景気後退、ひどい経済的不均衡、民族間紛争、有害情報の侵入、政府の質と政治腐敗、外国からの資本や政治的勢力や犯罪勢力に対する管理欠如、環境保護や食料安全保障)として見なしている。
 過去20年間で、南太平洋で起きた紛争の情況は、すべて少なくとも4つの共通の要素を含んでいる。
  1. 民族的差異
  2. 土地問題
  3. 経済的格差
  4. 紛争を公平に満足行くように解決する政府能力への信頼の欠如。権力を持っ   た者は、政治腐敗か非効率のどちらかに偏る。
 そのため法は無視され安全は破壊される。4つの要素は以下の紛争にも明らかに見られる。
  1. バヌアツのサントー(Santo)の反乱(1979-80年)
  2. ニューカレドニアの民族紛争(1980年代)
  3. フィジー・クーデター(1987年)
  4. ブーゲンビリアの独立戦争とその他の紛争(1990年代)
  5. パプア・ニューギニアの騒動(The Oro for Oro movement)
    パプア・ニューギニアの高地(The Highlands)の部族闘争
  6. パペーテの暴動
  7. ソロモン諸島のガダルカナル紛争(1999-2000年)
  8. 中国などのアジア系移民増加による深刻な影響
  9. 先の東ティモールの紛争と西パプアの現在の紛争は同じ4要素を示してい
    る。
 10. 規模は小さいが、そのような緊張状態はハワイ、ニュージーランド、オーストラリアにも及んだ。ツバルでもあからさまな紛争は起きなかったが、1980年代に、首都のある島フナフティのリーダーによる国家分離の危機があった。
 程度の差はあるが、同様の緊張は太平洋地域や世界に広がった。それらの要素の重要性を認識すると、特に安全保障が維持されていない状況では、それらにより多くの注意を払う価値がある。それらが充分注意されていなかった理由の一部は、それらがデリケートな問題(「センシティブ」)であるからである。
 扱いのむずかしい問題には二つの対処法がある。一つは、それらが紛争へと悪化するまでは存在を隠し、否定し、避けることである。もう一つは、それらに対する一般社会の理解を推し進め、問題に関する率直で建設的な調査と話し合いを進め、問題を克服し、それが紛争の原因になることを防ぐ活動を広く推進することである。
 現実の安全保障問題が焦点とされないもう一つの理由は習慣である。安全保障サービスのいくつかは、現実に噴出した、またはいまも噴出し続けているような問題に、うまく適合していない。十年前、われわれは冷戦に別れを告げたが、冷戦は善くも悪くも、準備や軍備や姿勢を導き、仕事や利益や反応の型をもたらした。それらは現実の問題が変化した時、変えることが困難になる。
 いくつかの重要な安全保障問題はこの報告では扱わない。それらには環境的安全保障(環境保護)と食糧安全保障と保健(医療)が含まれる。

3. 環境的安全保障、食糧安全保障と保健問題
 これらは、一世代前には、ほとんど知られていなかったが、現在では多くの資金と一般の関心がこれらの問題に寄せられている。UNEP(国連環境計画)やGEF(国連地球環境資金制度)のような世界政府的機関、SPREP(南太平洋地域環境計画)やSOPAC(南太平洋地球応用科学委員会)やPICCAP(太平洋諸島気候変化援助プログラム)のような地域政府的団体、グリーンピースやWWF(世界自然保護基金)、PCRC(太平洋資源センター)、PIANGO、ソロモン諸島開発信託、シオシオマンガ アンド ザ タポロポロ ソサエティー (Siosiomanga and the Taporoporo Society) のような地球的、地域的、国家的NGO団体はこれらの問題の重要性を証明している。FAO(国連食糧農業機関)、SPC(南太平洋委員会)や多くのNGO団体は食糧安全保障に関連する計画を持っている。保健問題では、SPC、WHO、UNFPA(国連人口基金)と多くのNGOがエイズやその他の問題に取り組んでいる。新たな病気、遺伝の影響や悪化の潜在性は、私には解らない。多くの地域内外の研究機関がこれらの問題を研究しているが、SPREPやSPCがこの問題の専門家を擁した地域団体であり、フォーラムに助言するには最適であろう。
 環境的安全保障と食糧安全保障問題についての認識、資源、活動は、ここ30年間で大きく発展してきた。それは必要があって発展してきたものであるが、現在も進歩中で、継続的援助が必要とされている。しかし、それらの問題を安全保障分野における優先順位の第一と見なす人はほとんどいない。
 SPREDとSPCは、これらの問題に最も詳しい地域団体である。
 
4. 犯罪、騒乱、不正書類、国際的テロなど
 これらは、警察、税関、移民、空港の当局者の扱う問題であり、そしてFRSCのような地域的国際機関の問題である。それぞれのサービスには独自の地域的組織(SPCPC,OCO,PIDC、RHPM、PILOM、など)があり、それら組織間の相互活動はフォーラム事務官の法執行連絡サービスやFRSCにより促進されている。これらはすべて関連しており、情報の提供や訓練やより効果的な戦略の展開に適している。しかしここではそれについて扱わない。私には現在の活動や方向性については、地域的(国家間)と同様に各国内の法執行機関間の一層の協力と、情報提供の必要性を強調する以外に、示唆できることはないからである。
 
5. 国際的金融犯罪
 フォーラムには地域的金融情報提供アセスメントがあるが、ここでは扱わない。
 しかしながら、地域の警察や他の軍隊は、これらの新しく、高度に洗練された専門的犯罪にうまく対処する機能を備えていない。地域的な協力は必要であるが、地域的な解決だけでは成功しないだろう。なぜなら、それらの犯罪は多くは地域内より地域外の人間のしわざであるからである。犯罪者をこの地域から追放できる、国外の諸機関との連係が必要である。公務員の訓練は大切であるが、雇用数には限度がある。それらの技術を持った者は普通、商業や産業界ではより多く稼ぐことができるからである。これは技術を持つ者にとっては注意するに値する、とても重要な話題である。
 
6. 法と手続きの調和
 これは、PILOM(太平洋法務官会議)とフォーラムの事務局により、着手されている。
 進歩はゆっくりだが、確実に進んでいる。真の問題は、複雑で相互に影響し合っている世界に遅れをとらないために主権国家に必要とされる法律の専門家を、広く数多く持つ余裕が、小さい国にはないということである。その結果、いくつかの政府は政治的意思を失い、地域的会合で彼らが理解し同意していた主義を、覆そうとすらするようになる。
 
国家安全保障を悪化(低下、劣化)させる基本的原因   
 
 4つの問題―民族的差異、土地所有問題、経済的格差、及び政府の資質は、この地域でこの数十年に起きた実際の紛争の核心であると認識されている。このうち、経済問題と政府の能力不足は、一般に、民族問題と土地所有問題のきっかけとなるので、それから始めたい。
 
1. 経済安全保障
 世界中で、一般に経済的繁栄と安全保障の間には、相関関係が見られる。経済的安全保障が達成されている所では、戦争やその他の暴力のリスクは減少する。この相関関係は、多くの要因が存在するので絶対的とは言えないが、しかし存在することはたしかである。内戦や共同体の暴動は豊かな国より貧しい国に多い。そして貧富の差が大きくなればなるほど、憎悪や反抗が起きやすくなる。失うものがほとんどない者は、彼らの問題を克服するために、または不満を表現しようと、簡単に紛争に駆り立てられるのだ。
 太平洋で安全保障を推進するための優れた方法は、経済を発展させること、人々が自分たちが価値を置くより良い商品やサービスを持てるようになること、雇用機会が増加し、商業やその他の活動が広がること、教育や健康などのサービスの質が向上することである。しかしながら、そうする場合、公平さを確保し、太平洋島嶼民が高い利益をあげられる政策を採ることが重要である。
 経済を発展させるためには、投資と雇用の増加が必要とされる。投資は、できるかぎり国内からであるべきである−政府やコミュニティからの投資はインフラ整備に、個人の投資は雇用や収入を作り出す活動に。国内からの投資を最大限にするためには、それらの投資は資産を創り、そして国内で使われることが促進されるべきである。シンガポールの成功の一部は、すべての国民に、貯蓄と投資を勧めるだけでなく、それを要求したことにある。シンガポールは豊かだから貯蓄や投資をする余裕があるのだと言われることがある。これは逆である。シンガポールは貧しかったが、よく働き、貯蓄と投資と公正な政府のおかげでその経済を引っ張り上げたのだ。シンガポールの犯罪率が低いことの一つの要因は、経済的繁栄であることはほとんど疑いない。その繁栄は、雇用を作り出すために、そしてすべての人が財産を持ち繁栄の分け前にあずかれるように、政府や国民が精力的に働いたことで達成されたのだ。シンガポールの住宅所有率93%はこの政策のおかげである。またシンガポールの繁栄はその地理的位置のおかげであるという意見があるが、そうではない。マラッカ海峡周辺の都市が、貿易の中心地で1000年以上もの間繁栄しているのは地理的なことが理由である。現在、インドネシアとマレイシアの都市がその立場にあり、同様に繁栄する可能性を持つ良い地理的位置にある。しかし、インドネシアとマレイシアには、シンガポールが過去数世代に渡り持っていた有能な政府も、国民の文化的価値観もない。それらが繁栄と貧困の差を生むのだ。
 人々は(地元の人間でも外国人でも)、安全で儲かると感じる所や、法外な政府や他の妨げや非効率なことのない所には、すぐに投資するだろう。不安を感じる所には誰も金や技術をかけようとは思わない。国民による投資が不十分な場合、外国投資を求められる。おもなリスクは、一貫性のない政府の政策や危険な環境である。投資家は太平洋島嶼国や領土の危険度をどのくらいに見ているのか、そしてそれは何故か、について独自の査定をすることはFRSCにとって有益である。全銀行やいくつかの国際的投資会社はそれらの査定を行っており、(しかしそれらはめったに公表されない。Standard and Poorはこの地域の国、少なくともクック諸島、フィジー、パプア・ニューギニアの信用度調査をしている。)アジア開発銀行と世界銀行には評価を依頼できる。この報告書の準備のために許された短い時間の中では、どのような情報が役に立つのかを決めることはできなかったが、フォーラムの事務局は次の会合のために、この情報を集めることができるだろう。この情報の大きな利点は、評価をする者は関係国に何の利害関係も持っていないという意味で、客観性があるということである。

 経済的リスク評価は、誰が、どのくらい投資するのか、そしてどのくらいの利益が地元の経済に入るのかを決める主要な決定因子である。それはまた、犯罪や民族間の暴動のレベルから見た、身体的な安全保障の決定因子でもある。経済を繁栄させることは、安全保障推進のための重要な第一歩である。経済発展には投資家の信頼を高めることが必要であり、それには、政府の一貫性のある公正な政策やその公平な実施、紛争解決のための公正で効果的な司法制度、社会的安定、そして優秀な政府が必要である。

2. 国籍貸し出し(Renting sovereignty)
 「国籍」の販売についての政治的、経済的安全保障問題は、関心の的である。これは、関係国の国際的な地位と信用を失わせ、望ましくない影響をもたらす。
 制限つきのパスポート(国民や住民の権利はない)は外国人向けに数カ国で販売されている。少なくとも買い手の何人かは犯罪者で、彼らはこのパスポートを本当の身元を隠すためや、邪悪な目的のために使用する。ほとんどは詐欺と関係しており、関係国の国民にはほとんど利益をもたらさず、国際的には二流国のイメージが与えられる。
 マネー・ヘブン(money havens)や便益船籍(税金逃れのために船舶を他国に登録すること)などの他国籍の使用は、多くの場合、非倫理的で犯罪的な行為と関係しており、その国に広く影響を及ぼし、自国民の利益にはほとんどならない。それらの主たる目的は、世界の富める者を保護し、収入の格差を広げることである。太平洋の人々は、国籍を簡単に貸し出した時には、深刻な事態を予測できなかったのだ。

3. 外国による乗っ取りの危険性
 この地域で考えられうる問題は、鉱物(陸地・海域)、木材、魚、その他の資源の管理についてである。主に懸念されるのは、利益が不均衡に外国の利権や政治的仲介者に流れてしまう危険である。これは、重大な騒動や破壊活動につながる。資本基盤の破壊は紛争の機会を増加させる。回復不可能な資源の場合は、鉱物が採取されると、収入の多くを信託投資しない限り、「立ち枯れ」状態が確実である。森林や魚のように回復可能資源の場合は、採る割合を考えないと、資源基盤やそれによる利益はすぐに小さくなる。
 
4. 弱い通貨の弱み

 一般に、経済力が弱いほど、その国の通貨も弱い。ミクロネシア連邦、マーシャル諸島、パラオはUSドルを使うことでこれを克服した。キリバス、ナウル、ツバルはオーストラリア・ドルを、クック諸島とニウエはニュージーランド・ドルを使っているが、遠い将来オーストラリアやニュージーランドは、経済が弱すぎて自国の通貨を管理できなくなるだろうと感じている者もいる。これはこのフォーラムが1970年代初めにすでに協議した問題であるが、さらに考慮する価値がある。

5. 急激な人口増加
 急激な人口増加は経済成長を困難にする。また質の高い教育、保健(医療)その他のサービスも一層困難になり、安全保障上のリスクを高める。
 経済問題は規模(資本や科学技術や技能の)に関係する。しかし、いくつかの基本的問題は文化的問題である。
 
6. 統轄の問題
 イエレミア・タバイ(Ieremia Tabai)(キリバスの前大統領でフォーラム理事長)は太平洋科学会議のシンポジウム(「主権、安全保障、国家への挑戦」)のオープニングで、次のように述べた。「太平洋諸島への現実の脅威は内部から、われわれの政府から来る。それは効率的に活動しようとするわれわれの能力を損なう。」
 このタバイ発言に対し唯一述べたいことは、政府の政策は優れている、しかし実施に一貫性がないことにより、それらは破壊されるということである。
 解決策のほとんどには、政府が利益にならずに障害となっているような分野から、政府を退かせることや、政府の質を向上させることが含まれる。これはここではこれ以上論じない。なぜなら、政府やフォーラム経済閣僚会議による声明や、地域の貿易大臣により経済発展のためにとられた裁量を通じて、ある程度の進歩が見られるからであり、また事務局はすでにこの分野のプログラムを持っているからである。しかしながら安全保障評価にはすべて、政府の資質を考慮に入れる必要がある。

7. 長期的な安全保障のもつれ
 民族問題(原住民と移民の相違、異なる原住民間の文化の相違、の両方)は安全保障の破壊において、たいそう顕著であったのに、もっとそのプロセスを理解しようとしたり、それらがやっかいな問題へと発展する機会をもっと減らそうとする方策が採られてこなかったことは驚きである。民族間の緊張はこの地域のほとんどで、安全保障問題の大きな原因であるにもかかわらず、なぜ、民族関係を前進させ、紛争の種を減らすような研究や活動にほとんど注意が払われなかったのだろうか?
 その理由には、一般に、移民の文化(移民してきた住民の、又は外国からの文化)のために民族的要素を軽視することが一般的であり、そしてこの地域の研究者は移民の文化圏から来ている事実が挙げられる。もう一つは、主な論理的枠組みはヨーロッパからのものであり、そこでは社会科学者たちはマルクス主義思想を吹き込まれており、エスニシティは間違った認識だと仮定していることである。学者たちは、ソビエトやユーゴスラビアにいる、(エスニシティの重要性を三世代にわたり否定してきた)彼らと同種の人々が、彼らの国は民族的コミュニティでばらばらに分かれていると気付くまでは、安全保障問題における民族問題の現実を見ることは困難だと解った。大学も社会の他の面と同様に時流に従属する。そして頻繁に起こる彼ら自身の社会での民族紛争と、心理学や遺伝学の進歩が時流を変えていくだろう。
 民族問題は多文化国家では特に激しいものとなるが、現在、太平洋のほとんどが多文化国家である。非トンガ人がほとんどいないトンガでさえ、小売業のほとんどを乗っ取った300人ほどの中国人に対する犯罪の急激な増加が報告されている。同様にアメリカン・サモアの議員は、アメリカン・サモアでは近年、アジア系のビジネスマンが商売の80%以上を乗っ取り、それが多くの摩擦の原因となっていると述べている。これは西ミクロネシアやメラネシアにおいても同様である。1950年代から、原住民のビジネスの数や規模は、ゆっくり増加し始めた。これは1990年代まで続いたが、現在、その割合はこの地域の大部分で減少し、北西アジアの移民に取って代わられた。この傾向は続き、多くの安全保障上のもつれを生じるだろう。
 民族問題は原住民の人口についても重要である。ミクロネシア連邦では、憲法上すべての国民は平等である。しかし非法律的なプロセスでは非公式な「ミクロ流」(microcitizenship)が州や島に適用される。全国民人口が1万5千人ほどのクック諸島においてでさえ、ある老女が新聞に、彼女は離島の出身であるため、首都のラロトンガで、人生の大部分を過ごしたにもかかわらず、常に「よそ者」あつかいされたと訴えている。
 この地域における危険の基本的原因は、教育が不十分なことから起こる。低い教育水準は低収入や低雇用、高い犯罪率としばしば関連がある。教育水準は世界的に上がっている。しかしそれは太平洋でよりも、西アジアで早くおきた。これは太平洋の人々と、彼らと相互に影響しあう人々の間の知識、収入、特権や権力の溝を広げるだろう。もう一つの大きな溝は、首都と、離島や奥地の間の教育水準の差である。キリバスでは進学の機会を広めるために、各島の人口を基準とした中学校奨学金制度を設けており、各島にマリタイムカレッジ進学の割り当てがある。地方と都市の両方で、そのような政策がもっと必要である。
 優れた教育の利益は、きわめて若い時代の活動から生じる。おそらく最大の報酬は、若い母親を、自分の子供の才能を生かす手助けができるよう訓練することから得られるだろう。学校に上がってからよりも、むしろ子供が学校に上がるまでが、子供の知力や性格の発達において、より重要な期間であることが、いまでは知られている。大学は、学習過程において、費用は最大で効果は最小ということになる。現在いくつかの国では、教育制度を見直している。カリキュラムの内容を含む教育制度の改革は、長期的安全保障に優れて前向きな影響をあたえるだろう。
 女性の才能はかなり自由になったが、まだ自由化の余地が残されている。これは収入が高く、労働者保護政策や家族計画サービスが手に入る所では相対的に容易であるが、それらがない所では困難になる。進歩はしているが、一層の前進が安全保障も前進させるだろう。女性の平等が認められておらず、女性の能力が生かされていない地域で、安全保障問題が最も顕著であるのは、おそらく偶然ではない。
 犯罪や安全保障上の脅威の型には、青少年の不均衡が含まれる。何十年もの間、多種な国家的青少年サービスが要請されてきた。いくつかは兵役と組み合わせである。しかし、それらのサービスは、この地域では、ほとんど政府によって行われておらず、かなりがボランティア団体によるものである。この地域の青少年の活動を見直し、もっと有益な活動へ展開できるかどうかを検討することは適切である。しかし高いコストと非能率のため、おそらく政府や国際機関によってはなされないだろう。この地域で最も成果のある青少年向けのプログラムの重要な基準の査定は、より安全な将来を目指すわれわれの助けとなるだろう。

8. 社会保障
 暴力の脅威がない、と言う意味での安全は、社会保障により推し進められる。環境的安全保障とは違い、保健(医療)、人口計画、家庭内暴力、幼児虐待、を除いて、社会保障に関しては、もうできる事は殆どないように思える。しかし、平均医療回数の増加や、サービス能力を超える人口増加、さらに生粋の太平洋島嶼国民の平均収入が減少しているため、多くの課題が社会保障に残されている。医療と人口の分野では、SPC、WTO、IPPFやその他の地域的、国際的機関が優れたプログラムを用意している。
 
9. 情報の侵害 (the information invasion)
 「最も侵害がひどいのは、情報(によるもの)であり、テレビやビデオ、インターネット、その他によって起こる。」と、政治家、企業家でもある太平洋の上級外交官は述べている。彼は、情報のグローバル化の確実な潜在力を認める一方、倫理の枠組みへの侵食作用を懸念している。よく、情報の「自由な流れ」と呼ばれるものは、自由どころではない。ほんの数ヶ国のほんの僅かな利害関係が、太平洋や世界を水没させる決定要因を握っているのだ。上級外交官やこの地域の他のメンバーは、個人に対するだけでなく、太平洋の文化や国家の統合や団結力に対する、ひいては国家安全保障に対する影響について、強い関心を示している。
 このことは、情報の自由はどこまでであるべきかという、困った問題を提示している。各国とも行き過ぎた暴力やポルノに関する規制を設けているが、実効のあるものにするのは困難な情況である。そして、最もひどい侵食はそれらの中にあるのではなく、規制の届かない商業的な広告の中にあるのだ。
 イデオロギー的侵害の可能性を挙げる者もいる。特に原理主義的宗教の様式である。おそらく、今日最も深刻なのは、広告産業によって推し進められる欲望のイデオロギーである。

10. 執行されていない警察の社会的役割
 警察の当局者たちは、彼らの権限は狭すぎると感じている。ある者は、幾人かの警察官に調停や紛争解決のための訓練を受けさせたい、と述べている。また別の一人は、訓練された力を発展的に考え、彼らの仕事をいつでも経済や社会そして個人の進歩に関連するものと見なしたいと述べている。これらの示唆は公共の助けとなるだろう。
 
11. 競争的ハイテク世界における文化的不利益
 小さな自給自足社会を背景に発展した文化的価値や倫理観は、しばしばそれらが公的利益と一致しない場合、国民的問題とされてきた。これらは時に「伝統」と「西洋」として相対的に描かれてきたが、そうではない。ヨーロッパの文化的価値と倫理観は、ヨーロッパも多くの自給自足のコミュニティで出来ていた頃は、太平洋とよく似たものだった。そして、太平洋ではどこでも、小規模社会から来た価値観や倫理観を、国民国家形成の後も長い間続けているのだ。
 ゆえに、小規模自給自足社会で美徳とされてきた多くの道義が、国民国家においては悪習となる。たとえば同族の登用(情実)、相互助け合いを基礎としたリーダーへの贈り物、血縁的結びつきなどである。これは締め出された者の不満や幻滅を招き、倫理を腐敗させる。これらのやり方はすぐには変わらない。それらに挑戦するために多くのことが政府や経済管理において行われて来た。絶えざる圧力が、国民国家に最も適した道義を強めるために必要である。

12. 社会要因と安全保障のつながり(連結)のフォーラムの認識
 環境問題で成功してきたように、時折、政策決定者、研究者、NGO、メディアは集まる必要がある。エスニシティと、関連するその他の社会要因は、行動調査や建設的報道規制、学校や大学、女性や青年団体のプログラムなどを伴う処理が必要である。エスニシティと他の社会問題はより深い理解と活動を必要とする問題であることを認識した、というフォーラムの声明は、それらの問題を公に認識させ、教育的プログラムに組み込む助けになるだろう。
 
13. 土地をめぐる紛争
 これは、この地域におけるここ数年にわたる、安全保障の破綻の構成要素である。また経済不振の大きな原因でもある。独立した時に、この地域の新しい政府は、土地問題解決に高い優先順位をつけた。しかし実際には、他の問題にすぐに取って代わられ、土地問題はかつてよりさらに深刻なものとなっている。
それらが優先されない理由には、その解決には時間がかかり、結果が出るのは遅いということが含まれる。また解決が後になれば、もっと経済的、社会的に損失が大きくなるにもかかわらず、当分はほうっておけるからである。
 土地問題には完全な解決方法はない。しかしそれらの解決に働きかけ続けることは、優先すべき価値がある。

国家の法的強制力の推進
 
1. どの程度まで政府の強制力は合法的だと認められるか?
 この地域のいくつかの国では、合法性は弱まってきたように見える。領土(フランスの領土のような)や属州(西パプアのような)では、合法性はある程度、原住民対移民のエスニシティ民族問題に影響を受ける。民族問題は原住民と移民の間だけの問題ではない。ガダルカナルの問題は一部は、マレーシア人が法の執行やその他の行政サービスにおいて、高水準の収入を得ることや、ビジネスを含むより多くの資産を所有すること、より高水準の教育を受けることなどを主張しすぎることと関係している。民族間の不均衡は、社会の他の面で埋め合わせがなされない限り、法の執行機関への信頼が失われる原因になる恐れがある。
 問題は非政府関係オブザーバーだけでなく、法の執行機関内の上級公務員やさらに上層部によって引き起こされる。それは法執行機関の職員の人選や運営の詳細への政治的干渉などである。これは、政治的基準において、ある人物が訴えられるか否か(罪を負わせられるか否か)の場合などにおいて、客観的基準で下されたのではない決定につながる。すべてこれは法執行機関のモラルの低下を招き、彼らに対する社会の信頼を失墜させる。
 また、いくつかの分野、軍隊や警察のある部門が危機の原因であるという見方も広く行き渡っている。個人的利益のための権力乱用、プロの犯罪者への武器の売買や貸与で告訴されたりする者もいる。いくつかの地域ではそのような主張が客観的に認められる。ある高名な民族コミュニティのリーダーは、「われわれ市民は今や警察と軍隊を憎んでいる。以前はそうではなかったのに。」と述べた。一方、そのような行為は許されていないのに、警察のメンバーの中には、人員数、給与、施設の不十分さや、公式の裁判制度が不効力であるために、時として「二流の(いいかげんな)」執行をするしかないのだ、と主張する者もいる。
 一方、多くの軍人や警察官個人は、一般の信頼を得ており、経済成長や社会発展を高める高い水準の専門的技能を備えている。法の執行の質は一般の信頼を構築するための主要な要因であり、すべての発展の基礎である。前に述べたように、信頼や民族性や専門性や統合を推進させるオセアニア慣習協会(Oceania Customs Organization)の活動はこの地域の指針となるだろう。
 同様に、執行機関による例は、犯罪と安全保障の双方に影響を与え、それは政治やその他の生活におけるリーダーの手本となる。この研究の間に、しばしば、政府内外において、自己利益のために権力を乱用し「法を逸脱する振る舞いをする」政治家についての不満を耳にした。この事をきわめて重大な危機の原因であると見なしている人は多い。 政治的リーダーは良い手本を示し、そうでない時は他の国民と同様に取り扱わない限り、犯罪や危機はエスカレートするだろう。
 単一、もしくは数個だけの言語を持ち、文化を共有しているような小さな司法管轄圏では、犯罪を統制することは明らかに容易であり、有罪率は相対的に高いように思われる。有罪率きわめて低い所では、多くの事件(裁判)において犯罪が犯罪者に利益をもたらす。それらの裁判では、より多くを地元の裁判の管轄とし、伝統的な司法原理を組み込むことを要請する事もある。慣習にあるように、賠償により重きが置かれ、小さなコミュニティでの家族に対する身内の責任が求められる。少年裁判所や家族団体協議会などを含め、司法のもう一つの形が探られている。
 
2. 犯罪学校のような刑務所
 政府の財政状態が厳しいため、刑務所は多くの場合レベルが低く、「犯罪の学校」だと言われている。これもまた、社会統制のためコミュニティの責任が求められるもう一つの理由である。多くの国は最も適した司法の形について調査、報告し、考慮する任務を負ってきたが、現在の司法制度は、高収入産業国で使われている手続きや原理の影響があまりにも強すぎると感じている。
 
3. 公的チェック・アンド・バランスの確立
 警察、裁判所、オンブズマン、酋長審議会(Leadership Tribunal)、海外資金調達委員会(Commission for Offshore Financial Services)などが効率的に機能しない限り、社会や国家、さらには地域全体の安全保障は危ういものとなる。
 
安全保障問題の法的調整
 
1. 安全保障を高める非公的制度や手続きの促進
 もしほとんどの人々がいつも法に従い、他の人の利益を考慮したならば(他の人のことも考えたら)政府機関はもっと効率的に機能することができる。
 ソロモン諸島において、それぞれの教会にガダルカナルの紛争の調停を進めるプログラムがあるという事実に感銘を受けずにはいられない。ある教会は、話し合いと相互理解のために、対立するグループのメンバーを一同に集めた。これらの先例のように、コモンウエルスと政府の合意のための交渉は、人々が和解の必要性を納得するまではほとんど前進しないであろう。平和を達成し、それを永続的なものとするには、政府関係者と非政府団体の双方の努力が必要とされる。
 
2. フォーラム地域安全委員会(Forum Regional Security Committee:FRST)の拡大
 参加者のため、かつメンバー政府への調整されたアドバイスのソースとして最大の効果をあげるために、FRSTは、現存する多種の安全保障関係サービスのリーダーの委員会への参加を必要とする。それらには、南太平洋警察長官会議(South Pacific Chiefs of Police Conference)、オセアニア慣習協会(Oceania Customs Organization)、太平洋諸島入国管理局長会議(Pacific Islands Directors of Immigration Conference)、太平洋諸島法務官会議(Pacific Islands Law Officers Conference)の議長や長官、フォーラム法執行連絡官(Forums law enforcement liaison officer)、フォーラム役員委員会(Forum Officials Committee)の議長が含まれる。ほとんどの太平洋諸国は軍隊を持たず、そのための地域的組織もないが、それでもやはり防衛の責任者は参加すべきである。
 もし他の公務員が出席できるなら、ボーナスのようなものである。現在、多くの国家は大使が代表しており、このことは彼らが政府からの意向を示し、また政府に報告し返す見地から有益である。しかし委員会には、広く経験をつみ、国家安全保障分野で実際上の責任を持つ(主要)人物の参加が必要である。
 また非政府参加者や、利害関係者が参加する場合もある。10年前までほとんどの政府や政府内機関は密接な話し合いを持っていた。近年は、参加者の範囲を広げることの利点が認識され、相互理解のために、国連や世界銀行、それ以外のたくさんの協会が、ますますより多くの参加者に門戸を開いている。
 教会、NGO、青少年や女性団体、教育機関、トランスペアレンシー・インターナショナル、ビジネス・フォー・ソーシャル・レスポンシビリティ、などが含まれる(参加する)ことは、安全保障を推し進め、警察や他の政府機関の仕事をしやすくする。
 アセアン地域フォーラム(The ASEAN Regional Forum:AFR)は、二通りのやり方を採った。1つは政府のための排他的協議と、もう1つは広範囲の参加者向けの協議である。後者はアジア太平洋安全保障委員会(the Committee on Security Cooperation in the Asia Pacific:CSCAP)であり、これは政府系・非政府系両方の団体の代表を含む。CSCAPとは関係ないが、1999年の6月にハワイで島嶼国家安全保障会議が、この地域中の公的、私的もしくは「市民団体」の代表とCINCPACを開催したのは、CSCAPと同じやり方である。
 いままで太平洋島嶼諸国はCSCAPにほとんど関わりを持ってこなかったが、基金やこの分野の専門技術についての会議の時を除いて、参加を止めるものはなかった。このことは、フォーラムはCSCAPに代表を送り、この地域に関する調査の概要を発表すべきであることを示唆している。
 市民団体は、非政府、非営利の個人や団体を包括しているものである。市民団体には過去50年間発展してきたNGOの多くのメンバーが参加しており、商業に操られるメディアよりもジャーナリスト(第4権力)、学校や大学よりも教育者としての重要な地位に成長してきた。
 非宗教的なNGOの最もありふれた問題は資金の問題であり、太平洋地域の資金供給は、課税権力をもつ政府、利益追求の産業界、及び太平洋諸島民に広く関わっている教会により窮地に追い詰められている。非宗教的NGOは収入源がほとんどないが、成功し影響力をもつようになってきており、多くの場合、政府や政府内機関、産業界もしくは教会より費用効率はよい。
 大変に有力なWorld Match誌は「次の30年間への7つの鍵」の検証において市民団体の成長を、「すぐに鈍感な政府や産業に匹敵するほど強くなるだろう」と認めている。(World Match2000,3,vol.13.no.2 page 13)
 FRSCが参加者の拡大を考えていることはすでに述べた。まず第一に適切な教会の人間である。なぜなら現実に、教会はこの地域で最も影響力を持つ非政府組織であるからである。(ソロモンで調停に関わった人物は適切であったと思われる。)次に、Transparency International、(最近組織されたばかりだが尊敬されている協会で、個別のケースは扱っていないが、安全保障の拡大につながる基礎作りをうながす機関)と、適切な理論畑の代表(NPG National Research Instituteは現在、安全保障や紛争問題についての調査プログラムを持っている。)そして適切なNGOの代表(おそらく太平洋資源センター)が含まれる。

3. 脅威を最少限にする法の執行機関の役目
 軍隊の大きさは政府の問題であるが、外部のオブザーバーのみならず、多くの国民もそれら(軍隊)の相対的な規模の根拠を知りたいと思っている。ほとんどの人は国境を越えてやって来る軍隊の脅威を意識していない。また、もしそうなれば彼らの軍隊が攻撃に反撃することができるとも思っていない。
 いくつかの国は軍備をしておらず、必要だとも考えていない。一方では、すぐ近くに同じような環境でありながら軍備を最重要であると見なしている国もある。軍隊の存在や規模について公式に述べられている理由は、近隣諸国や自国民の多くにも本気には受け取られていない。
 唯一の例外は、国際的平和維持活動で、国内外で一般的になったようだ。フィジーは自国の軍隊(最近では警察も)をこの活動のために多方面で効果的に使っている。これは相当な収入になり、仕事を必要としている人口の一部に仕事や訓練を与え、国際的に良いイメージを得られ、国際コミュニティからの援助を得る交渉の手段となる。
 公的援助を得られそうなその他の役目は、密漁密輸の取り締まりや調査、救助のための200海里のパトロールである。ほとんどの国ではこれは警察の活動である。職務は警察の陸上での任務に近く、彼らはそれぞれの国の領域内で活動する。
 すべての軍隊はまた、いったん退役したスタッフに有益な訓練を計画している。そして軍隊はいくつかの公益事業を引き受ける。それは観光産業推進のための建築や輸送、大量人員の派遣やそのほかなんでもである。もし軍隊が軍事的目的のために不可欠であるのなら、平和時における彼らのそのような利用は賢明である。しかし実際のところ、軍隊の現在の規模に関しての言い分は理解されにくい。
 国際的平和維持活動やEEZのパトロール、そして協力国として相互義務を履行する場合は別として、国軍が撃退できるような域外からの脅威がなくなり、ブーゲンビル(太平洋の軍隊が戦争使われた唯一の例)では目的は達成されなかったとすると、警察に対するのと同様に、軍隊に支出することは理解されにくい。これは特に経済的戦略の時代ではそうである。海外からの犯罪が増加してくると、警察の力を増強するケースはよくある。しかしそうする余裕のない国も、一方では軍事力には金をかけている。
 
4. 地域的安全保障の年次報告?
 年次報告、(おそらくは内務省による)この地域の安全保障状況の概括はメディアを通じて一般に公表する価値がある。それには政府のみならず、諸国家や地域全体の報告書や業績も含まれる。これは安全保障問題についての一般の意識を対等な方法で高め、一般の協力を促進するであろう。協力は重要である。
 
地域外からの軍事的脅威
 
1. 水上境界線(Water boundaries)の利点
 
 水上境界線は一般に陸上境界線より防衛が容易で費用がかからない。この地域は幸運にも陸上境界線は1つあるだけだが、(西パプアとパプア・ニューギニアの間)それでも、不満の原因であった。
 
2. アジアの再軍備
 軍事的脅威を、差し迫った(短期の)ものとして見なしている人はほとんどいないが、多くのアジアの国は軍備増強に巨額を費やしている。これはアジアの安全保障問題では周辺的(重要とされていない)な太平洋諸島を目的としたものではないが、軍備増強による副次的な危険が恐ろしいのである。その例が20世紀の2つの大戦(第一次世界大戦、第二次世界大戦)で、この地域は付随的に脅威に巻き込まれ、深刻な影響を受けた。
 関係する2つの主要地域は、メラネシアに波及するインドネシア問題と、太平洋諸島におけるアジア紛争の再燃(最も一般的なのが今日アジア、太平洋地域で最も拡張主義的である中国)である。中国―台湾紛争が太平洋で再燃する、または中国が、中国移民の増加が問題となっているこの地域内の国に自国民を守るために圧力をかける可能性もある。
 
3. 地域内問題
 それらの脅威のほとんどは域外からのものであるが、ブーゲンビル紛争間の軍隊のソロモンへの侵攻は、近隣諸国間にも注意すべき問題があることを示していると指摘する者もいる。
 
4. 安全保障を推進するより大きな力の恩恵
 ミクロネシア連邦、マーシャル諸島、及びパラオは、国防の大部分を自由盟約(Compacts of Free Association)によりアメリカに依存している。この取引については賛否両論ある。主要な損失は、多くの戦略的決定が自国の手を離れることであるが、利益は世界で最大の軍事力によって守られ、ミクロネシアの国家自身にはコストがかからないことである。盟約国のミクロネシア人は米国軍に参加することができる。
 また米国海軍と米国沿岸警備隊は、ミクロネシアの米国盟約国のために調査や救助活動やその他のサービスを提供する。ミクロネシアの漁民が行方不明になった際は救助しなければならず、その莫大な費用は盟約のもとアメリカによって支払われる。彼ら(漁民)自国の政府は、経済的に限られているので、救助施設を備えることはできそうもない。
 1965年に自治を獲得したとき、クック諸島は同様に国防をニュージーランドに委託した。80年代になって、自衛の責任を負ったが、現在はニュージーランドと防衛協定を結んでいる。ニュージーランドは同様の協定をフィジー、サモア、トンガ、その他の近隣と結んでいる。クック諸島はまたフランス、オーストラリア、アメリカと戦略・防衛の重要な条約を結んでいる。幸運にもクック諸島は小さく、分散しており、外部からの軍事的脅威をあまり感じていない。
 ほとんどの国は彼ら独自の軍備を望んでいるが、極小国家の現実の財政状態では、軍備があってもなくても、大国による攻撃にはお手上げであろう。事実、現在、世界の中で軍事上で「単独行」の国はなく、(自衛と言っても)程度の差である。世界がますます「ワイヤーで繋がれる」につれて、主権の概念は疑わしいものとなる。だれが一緒になるのか?どの地方までか?どこまでより豊かな大きな国と結ぶのか?

5. 地域を越えた犯罪
 政府を揺さぶり、麻痺、崩壊させる犯罪の可能性は新しい現象である。犯罪組織は今や小さな政府をそのような事態に陥らせる力を備えてきている。クック諸島、マーシャル諸島、ヴァヌアツなどは、不正の「保証書」取引から保護されてこなければ、破産に追い込まれるであろう。この地域の政府は今や警戒を強めているが、犯罪者は常に新しい手口をさがしている。軍隊、警察、その他の行政機関にはそのような可能性があってはならない。
 しかし、犯罪の脅威は軍隊にはありそうにない。犯罪の脅威は財政関係の機関や、税関、資源を統制しているところにありがちである。

安全保障における法的機関の役割
 
1. 協議の費用効率化
 定期的に会合することは重要であるが、協議は費用がかさみ、時間がかかり、仕事が滞る。警察局長(Police chief)らは2年ごとに会っていたが、現在は毎年である。法務官、税関、移民局、刑務所の局長は毎年か2年に1回。それらの人々が集まることにはもっともな理由があるが、しかし毎年1回の頻度は論理によるのか魔法か習慣か?どうして3ヶ月や24ヶ月や36ヶ月に1回ではないのか?
 また軍事的脅威や、犯罪、その他の脅威のほとんどが、この地域の他の国からくるのではなく、地域外からくるので、域内と域外の関係の(相互作用における)適切なバランスを維持する必要がある。パラオの主要な安全保障関係はクック諸島とほとんど関係を持っていない。われわれは、地域的連合はその関係諸国の利益に基づくのであって、(自己を惑わす)イデオロギーに基づくのではないことを確認する必要がある。
 他の地域の認識も必要である。いくつかの目的のために、ミクロネシアは協力活動には欠かせない地域である。なぜなら、彼らはオセアニア地域全体よりもより共通の行動(共同歩調)をとるからである。同様に、ポリネシアと異なりメラネシアには多くの共通の要素がある。
 遠距離通信の大幅な進歩により、この地域内外で行われている安全保障関係の協議のコストを算定するには良い時期である。(たとえば自国の納税者の負担、給与税や間接税―料金や設備や会議にかかる費用)。現在すべての協議は、局長給の話し合いのようである。しかしおそらく時々は専門分野のトップの場合もある。
 
2. 予防的外交
 これは理論的には一般的であるが実際には困難であり、費用もかかる。安全保障上の潜在的脅威のある地帯は多数存在するが、そこで大きな紛争が勃発することはほとんどない。予防的外交で救われるであろうという事に関しては考えは大きく変わった。この地域のいくつかの国で起きた民族紛争や階級闘争を含む研究の間に、わたしは示唆をうけた。
 最近のこの地域におけるきわめて危険な4つの局面はすでに挙げた。すべての場合において、それらの紛争を予見していた者はいた。しかしどの場合でも、権威者は、国際的定義による「予防的外交」に賛成することはなかっただろう。権威者は(少なくとも、紛争が勃発し、国際的な問題となるまでは)、たとえその地域のほかの国にすでに影響を与えていたとしても、これは内政問題であるとして外部の調停を拒否した。
 【フォーラムによる、ニューカレドニアへの実情調査使節は、しばしば「予防的外交」として挙げられる。私はそれらがフォーラムにとって有益であり、ニューカレドニアの政治過程に新しい次元を付け加える積極的な役目を演じたと信じているが、これは「予防的外交」とは少し異なる。】
 別な場合には、外部の働きかけを受け入れるまでには、情況は通常「予防的」段階を過ぎて良くなっている。もっと的確な言葉にするほうがよいのではないか?「外交的和解・調停(conciliation)」であろうか?
 もしそのような外部の関わりが認められたら、関係政府はだれに和解交渉を引き受けてもらいたいかを決定することになる。近隣国や同じ地域内の国によって(和解交渉が)行われた場合はあるが、遠く離れた国や、できるだけ公平な結果を期待して国連やコモンウエルスなどが関わる場合もある。
 もしある国がそのような関与を行いたければ、資金供与の必要がある。地域的災害救済基金(the Regional Disaster Relief Fund)の役割は、自然災害と同様に人的紛争の場合にも適応する地域的緊急基金(a Regional Emergency Fund)へと拡大する必要があるかもしれない。本格的な予防外交組織を、この地域で正当化する(認める)のは困難であろう。ほとんどの時間は何もせず、いざとなれば充分に処理できるよう、おおきく変動する必要性からである。しかしながら、事務局はメンバーからの要望に応えて、現存する世界的組織(たとえば国連やコモンウエルス)に打診し、地域内の援助を動員しその役割を果たすことができる。

3. 地域的平和維持軍?
 1980年代の初めに、パプア・ニューギニアの時の首相、ジュリアス・チャン(Sir Julius Chen)氏により最初に提唱され、それ以来いく度となく提起されてきた。ほとんどの国をしりごみさせる障害は、だれが費用を負担するのか、だれが統制するのか、どこに本部を置くのか、だれが影響力を持っているのか、そしてどちら側に付くべきか?、ということである。
 たとえば、1987年のフィジーのクーデター後、フォーラムのメンバー国はそれぞれ、公式・非公式に、それぞれの側を支援した。1978年には、クック諸島の選挙においてアルバート・ヘンリー党が勝利を主張し、政権を引き継いだ。コミュニティにはひどい分裂が起きたが、幸運にも流血の惨事は免れた。もし紛争が公になっていたら、そして他の政府軍に援護を求めてきたら、どちらを援護すべきだろうか? 後に何ヶ月にも長引いた裁判で、アルバート氏の勝利は巨額の賄賂と腐敗政治によるものだとされ、他の党に政権が渡された。1997年にバヌアツで公務員が、政府は彼らの金を盗んでいるとして暴動を起こした時、後に政府は法的にも道徳的にも不当だった、と判明するまで、外国の軍隊は援護すべきであっただろうか? もし東ティモールが南太平洋にあったなら、外国の軍隊はインドネシアや東ティモールを援助すべきだったろうか?ニューカレドニアでは多数派に選ばれた政府(フランス人とポリネシア人が優位の)と反対の少数派(カナク人が優位)のどちらを援助するのか? ブーゲンビルにおいては、ブーゲンビル独立派なのかパプア・ニューギニア政府なのか?
 実際のケースで、私がこの地域で気付くことは、誰が「正当」か「にせもの」かは言うまでもなく、誰が「いいやつ」でだれが「悪いやつ」かが論争になると言うことである。それらの多くの困難さゆえに、そのような軍(平和維持軍)が近い将来に創設されることはありそうにない。
 
4. 平和維持を容易にする、地域の法的、行政的調停
 これは地域的平和維持活動の小型版である。SOFA(State of Force Agreement)の初期の要請を事務局は保留し、世界中からSOFA調停について収集し、精通した。もし必要になれば、情況に合わせた調停を用意するために、それらの手続きが早急にとられる。二国間SOFAは国家の関心事項である。
 
5. 安全保障の評価
 独立の国際的安全保障評価(たとえば「自由」の概念について)は毎年収集され、公表されるべきである。なぜならそれらの評価は国民の安全保障や幸福(福祉)の多様な理解を示しているからである。このすべてのコンセプトの遂行の有効性を見積もる時間はなかったが、たとえばフリーダムハウスの年次世界評価は、犯罪や汚職の程度、選挙行為、政治的権利、市民としての自由、報道の自由などの基準を用いている。これは7つの分野でオーストラリア、ミクロネシア連邦、キリバス、マーシャル諸島、ニュージーランド、ツバルに最も高い評価を付けている。UKの「オブザーバー」は異なる基準を使っており、ツバルに最高の評価を与えている。UNDPは人間開発や貧困などの指数を使っている。これにはパプア・ニューギニアを除く太平洋諸国はまだ含まれていない。評価は使われている基準に左右されるが、異なる基準によるすべての評価においてツバルが個人の自由や国内の安全保障で高い評価を得ている。そして評価は、安全保障と、その他の主要な生活要因の間の広範な相互関係を示している。それは重要なことである。クライブ・ハミルトン(Clive Hamilton)博士はGPI(Genuine Progress Indicator)をすすめているが、それは所得の分配、雇用、資源の枯渇やその他の進歩の指標と同様に、犯罪や危険のような安全保障問題を含んでいる。これは、まだ太平洋諸国地域には適用されていない。投資リスクの評価は前ページで論じた。事務局にとって年に一度、入手できる評価をすべて収集し公表することは困難であろう。それは深刻な紛争の原因になることを避けるための活動の第一歩として重要な点を、政府や非政府団体に示すのに有用であろう。

6. 「平和文化」の促進
 ユネスコ(UNESCO)は2000年を平和文化のための国際年として平和運動を推進してきた。これは1999年のフォーラムで承認されている。提案された活動は、教会やNGOに、よりふさわしい事である。これは太平洋コミュニティが社会計画の一環として、広範なやり方ではなく、目に見える、地域の政府内援助として(おそらく実際の成功した調停のケースについての個人またはクラブによる報告の地域競争の形で)推進するのにふさわしいだろう。
 
7. 安全保障に関する地域的活動における、利益とコストの公平な分配
 地域的活動の効果は、利益とコストの不均衡な分配から大きく妥協的なものとなる。これは、多くの国を周辺的(marginalised)なままにし多くの国が、地域的協力を利益というより重荷としてとらえることになる。
 
8. さらなる段階へのプロセス
 FRSCは充分な経験をつんだ出席者たちに(たとえばSavenaca Siwatibau, Tony Hughes)次の協議で、経済の政策や実践に付随する安全保障についての話し合いを提案してもらいたいと思っている。民族的差異が危機となる可能性を減らす方法についてや、土地問題が市民の動乱の原因となることを防ぐ方法についてである。支配の問題はおそらく他で充分に話し合われているだろう。これらそれぞれの分野の進歩は、発展や繁栄に対してと同様に、安全保障にも積極的な影響を与えるだろう。
 事務局またはFRSCはこの次期討議でコンピューターを使った促進プログラムを使って、安全保障の改良のための指導の調査について検討したいと望んでいるだろう。このプログラムでは一人ずつがコンピューターを持ち、おのおの答えをコンピューターを経てする。促進者は議長となって、この過程を進めるが、個人的なことはインプットしない。この手法には多くの利点がある。より多くの議題を取り扱い、より速くまとめることができ、個人的な衝突や脚色が避けられる。なぜなら誰がなんと答えたか誰も知らないからである。そして個人や協会や国家が自分の議題を推したりすることが減り、民主的である。また学習のプロセスも推進できる。
 次期以降の討議でのもう一つの可能性は、明確で効果的な考え方や計画について多くの本を著している世界的な権威者エドワード・デ・ボノ(Edward de Bono)氏のような人を招き、会議の一環として講習会を指導してもらうことである。彼を知る人はみな、彼がたいそう刺激的で、新しい可能性へと私たちの心を向かわせることを知っている。彼は真心があり、もし彼が必要と興味を感じたならばひきうけてもらえるだろう。

考慮すべき諸問題(まとめ)
 
 ・ハイテク犯罪に対応する法執行機関の整備が早急に必要である。
 ・地域的な組織と同様に、各国内の法執行機関間の協力や情報の共有の促進は実行可能であり、望ましい。
 ・経済成長、利潤の分配、教育、統括、人種、土地所有権などの問題は、社会の維持にきわめて重要である。ゆえにそれらの諸要素のより深い理解や増進は安全保障を進展させるだろう。
 ・調停や紛争解決、そして成熟した判断(刑罰に重きを置く排他的なものではない)における法の執行の訓練は、警察局長により推薦され、公的援助を得るだろう。
 ・社会的・文化的要因と安全保障の間の繋がり(連鎖)の認識が必要であることをフォーラムが承認することは有益である。
 ・法の執行サービスにおける誠実さの問題は、それらの効果や一般社会の受容に大きな影響を与える。OCO(オセアニア慣習協会)の活動は他のサービ  スの大きな助けとなる。
 ・政治的リーダー間の高い誠意は安全保障に大きく寄与し、彼らの向上を目指す歩みは大きな恩恵となる。
 ・この地域において、より効果的な、司法の形の模索に関心を持っている。
  積極的な安全保障の環境作りに、より広い一般の理解と援助を得るために、FRSCの構成員の拡大が提案されている。
 ・事務局は、CSCAPの協議や活動、そしてフォーラムリビューの発行へのフォーラムの参加や、他の関係者の参加の推進を検討している。
 ・地域的安全保障の年次報告書の提案。
 ・メンバー国の要請があれば、事務局が外交的調停(diplomatic conciliation)で役割りを果たせるように、地域的災害救援基金は地域的緊急基金へ役割を拡  大できることが望まれる。
 ・すべての安全保障関係の評価(たとえばUNDPやその他の機関による格付け)の収集と公表は地域にとって有益である。
 ・事務局は、安全保障問題や太平洋諸島に関する書物、報告書、その他関係資料を図書館に収集することを検討している。

 
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ロン・クロコム (Dr. Ron Crocombe)
 ・元南太平洋大学 (University of South Pacific) 名誉教授
 ・太平洋島嶼地域の国際政治研究の第一人者
 
主要著書
 @ The South Pacific : An introduction, 1983
 A Pacific Neighbours, 1992
 B The Pacific Islands and the USA, 1995