1994年10月に独立したパラオは、その直後に自由連合協定によって1億ドルを越す援助金をアメリカから受け取った。このストックをもとに積極財政を進めたナカムラ大統領時代、パラオの国家財政は「厳しい状況だ」という声と、「問題ない」という声が交錯していた。2001年1月に就任したレメンゲサウ大統領は、「non-payday weekend」(給料のでない週末)をスローガンに、ナカムラ時代とは一転して緊縮財政策を採用、さらに「独立時にアメリカから受け取ったコンパクトマネーはもはやほとんど残っていない」と発表し(1)、国民に理解と協力を求めた。
こうして過去3年間、レメンゲサウ大統領は財政支出の伸びを極力抑える形での予算編成を行ってきたが、では現実に、パラオ政府にはどの程度の財政的余裕があるのだろうか。
パラオ国内で財政状況について語られるとき、通常は毎年秋に地元紙を賑わす年度予算法(Annial National Budget Authorization and Appropriation Act)の金額をもとにしている。たとえば過去4年間の政府予算法の額を比較したものが表1だが、これを見ると政府の財政運営方針、すなわちレメンゲサウ大統領が歳出を切りつめようとしていることがわかる。
ところがじつはその内訳を見てみると、繰越金の多くが使途決定済みの資金、あるいは投資原資であり、新規に予算措置できる資金はごく限られていたのである。その事実をわかりやすくまとめたのが図4である。ここでは各年度末の政府繰越金を、「使途確定・限定分」、「新規繰入可能分(公共事業用)」、「新規繰入可能分(一般歳出用)」に分類して集計している。これを見ると、2000年度末段階において新規に予算措置することのできる留保金は、一般・公共事業あわせてもわずか1900万ドルにすぎなかったことがわかる。
おまけにもう一つ大きな痛手がレメンゲサウ大統領を襲った。アメリカの株価暴落である。この点についてはこれまでパラオ国内ではまったくといっていいほど報じられたことはなかったが、レメンゲサウ就任年の2001年度に、それまで毎年1000万ドル近い利益あげていた投資利益が、一転して700万ドル近い損失を計上(表2参照)したのである。この年の予算では860万ドルの運用益を当て込んでいたから、この予期せぬ途方もない損失は、パラオの財源枯渇を一気に進行させる結果となった。
こうして2001年度末段階では、公共事業予算に限れば、留保残金よりも予算措置済み未執行分の方が200万ドル以上多いという異常事態になったのである。
そしてさらにこうした事態が進行中に編成された2002年度予算では、ささやかな投資利益(300万ドル)を歳入源に当て込んでいたのだが、この年も投資損を出してしまい、ついには補正予算を組んで虎の子の信託基金を取り崩すハメになった(5)。余談だが、信託基金取崩しの理由について、当時議会と対立していた大統領サイドは、さかんに「議会が勝手に酒タバコ減税を行ったため税収不足になったからだ」としたキャンペーンを打っていた。しかしその後財務当局者に、「ホントのところは投資損が問題だったのではないか」と尋ねると、苦笑いしつつ「その通り」と答えたものであった。
3.2003年度以降の財政状況と見通し
以上は2002年度までの状況である。現在(2004年1月)は2003年度予算の執行が終了し2004年度に入っている。2003年度の監査報告は未発表のため(例年通りだとすると2004年4〜6月頃に発表される)、2003年度以降の正確な財政状況は不明である。そこで、2002年度までの動きと、2003年度及び2004年度の予算法から2003年度収支を推計してみた。その結果が表4である。
この試算によると、次年度(2004年度)への繰越金(政府留保金)は約860万ドル減少して980万ドル程度になることになる。表4の信憑性はさておくとしても、信託基金を除く繰越金は2002年度末現在で2000万ドルを切っており、過去4年間、毎年1500〜3500万ドルの単年度赤字を計上している(2000年度は借款分を差し引く)以上、ここ数年内に政府本体会計の留保金が底をつくのはほぼ間違いないとみてよいだろう。
すでに留保金が急減している以上、今後はそこから発生する投資利益も微々たるものとなろう。こうした状況から見て、公債発行等による資金調達がなされるか、台湾あたりから巨額な援助金が入ってこない限り、コンパクトマネー以外のアメリカ援助や信託基金からの投入分を入れても、実質政府財政支出額はせいぜい6000万ドル程度に留まると思われる。すなわち、大雑把に言えば、政府支出は約2000万ドル減少(これまでの4分の3に縮小)し、上述の通り公的部門に経済活動の多くを頼るパラオ経済は大きな打撃を受ける可能性がある。
さらにいえば、まだ表面化してはいないものの、台湾借款以外にもコンパクトマネーのエネルギー援助分
(6)を一括前払いで受け取った代償として、2005年度末までに300万ドルをアメリカに支払う約束があり(コンパクト付帯協定による)これはまだまったく支払われていない。恐らく2005年度予算(=レメンゲサウ大統領が暫定予算を組み、新大統領が主に執行する)に計上されることとなろうが、乏しい財源の中での巨額の支払いは、2005年度の予算編成をさらに苦しくすることになろう。
2003年11月頃から、パラオでは2003年度の未払金(買掛金)が支払い不能に陥っていることが問題になっている。財務省発表として新聞が伝えるところによると(7)、国内歳入が予定より約370万ドル少なく(8)、総額で576万ドルの未払金を抱えているという。他方未収金勘定も346万ドルあるとされているが、この中には、2003年度予算で歳入源としてあてこまれながら、結局事業者からの支払いが行われなかった「バーチャルパチンコ事業(9)ライセンス収入」150万ドルも含まれていると思われる。いずれにせよ資金メドがたっていない負債を少なくとも200万ドル以上抱えているわけである。
表4 2003年度政府収支予想
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(単位:百万米ドル) |
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予想額 |
根 拠 |
歳入 |
コンパクト援助 |
13.93
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2003年度予算法(RPPL6-26) |
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その他のアメリカ援助 |
7.60
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過去5年の平均 |
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その他の国による援助
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未計上
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変動多く推計困難。財政援助ではないため収支バランス予想には影響なし。 |
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国内収入(投資利益込)
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28.19
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財務省予算計画局報告(監査前集計)及び財務省推計 |
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信託基金取り崩し |
5.00
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2003年度予算法(RPPL6-26) |
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単年度歳入計 |
55.87
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(アメリカ以外からの新規経済援助分を除く) |
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歳出 |
一般歳出(補助金・拠出金込) |
53.15
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2003年度予算法(RPPL6-26) |
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公共事業費(CIP)
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9.87
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新規CIP関連援助をゼロと仮定し、過去2年間の実績/措置済比率を平均(46%)。 |
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償還金 |
1.47
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2003年度予算法(RPPL6-26) |
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単年度歳出計
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64.49
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(アメリカ以外からの新規経済援助による歳出分を除く) |
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単年度収支 |
-8.62
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前年度繰越金 |
18.46
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次年度繰越金
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9.84
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(アメリカ以外からの新規経済援助の次年度繰越額を除く) |
4.まとめ:考えられうる今後の対策・シナリオ
以上分析したことを、レメンゲサウ大統領就任以降にしぼって総括し、考えられる今後のシナリオについて若干の考察を加えることで本稿のまとめとしたい。
まずレメンゲサウ大統領就任以降の政府財政状況は、以下の通りである。
@留保金(余剰金)減少の中で、レメンゲサウ大統領は財政引き締めを行い、予算的には5000万ドル台前半にまで削減した。
Bしかし過去に措置され未実施だった公共事業が継続的に実施されてきたため、実質歳出ベースではこれまでと同水準を維持しており、2002年度までは「緊縮財政」の実体経済への影響はほとんどなかった。
C他方この間に新規財源の確保はほとんど進まなかった。
D積み残し公共事業の執行が一段落したことで、2003年度以降は大幅な歳出減となる(歳出総額が年6000〜7000万ドル程度になる)。これはパラオ経済全体の縮小に直結する。
E他方、依然として単年度収支は赤字であり、「留保金繰り越し型財政」から「未払い負債繰り越し型財政」への転換が始まっている。
以上のような状況の中で、レメンゲサウ大統領はその対策として、a歳出の切りつめ、b税制改革による税収拡大、c外国投資法改正にはじまる新規大規模投資の誘致(民間部門の活性化)、d海外援助の拡大、を志向してきた。
aについては議会の抵抗がありながらも一定の成果は上がったが、現状政府規模を維持するのであればギリギリのところまできていると思われる。これ以上の切りつめは、公務員削減等の大なたをふるう以外は難しいが、2004年が選挙年であることからみて当面その可能性は低いだろう。
bとcは議会が動かず制度面での改革はほとんど進行していない。就任時に「最優先」と意気込んで議会に上程した「税制改革法案」と「外国投資法改正法案」は店ざらしのままどうやら任期を終えてしまいそうな気配である。議会が主導し2003年11月に立法化がなった「ガラスマオ自由貿易地域法」も、今のところ投資拡大の起爆剤としての可能性は低い。港湾施設がなく、道路もコンパクト道路完成が早くて2005年後半になるとみられているからだ。税制面では先頃酒・タバコ税等を値上げしたが、政府試算ではせいぜい20万ドル程度の税収増にすぎないとみている(10)。しかもそもそもこれは2002年度予算法の中で議会が大統領の反対を押し切って減税したものを元に戻したにすぎないともいえ、いずれにせよ小手先の改革にすぎない。
またdについても、現在の国際情勢とパラオの経済水準(統計数字上ではパラオはすでに「中進国」である)から考えて多くは望めないだろう。2003年12月にパラオはようやくアジア開発銀行加盟を果たしたが、低利子融資を受けるにはパラオのGDPは高すぎ、大統領は加盟の目的を「技術援助を得ることにある」と説明している。
こうした状況をふまえて、最後に想定しうる今後のシナリオをまとめてみよう。
A.余剰金枯渇以前に何らかの新規財源(たとえば失敗した「バーチャルパチンコ」のような)を得、現状経済レベルを維持しつつ民間部門の発展を待つ
B.余剰金枯渇に対し、公務員削減を含め歳出規模を大幅縮小し収支均衡を図る。国民経済は打撃を受けるが、民間部門の発展まで堪え忍ぶ
C.余剰金枯渇に対し、借款、国債発行、債務繰り延べ、徴税強化、新規無償援助確保、信託基金取り崩しなどで当面歳出規模を維持。政府財政はますます悪化するが、民間部門の発展まで堪え忍ぶ
D.余剰金は枯渇するも、借款、国債発行、債務繰り延べ、新規無償援助確保、信託基金取り崩しなどで歳出規模をさらに拡大。政府会計は急速に悪化するが、国民経済も活性化し、それをテコに民間部門の発展を目指す賭けにでる
レメンゲサウ大統領は就任時にすでにDの路線は放棄しており、Aについても結局この3年間でこれといった成果・見込みを得られなかった。そして現実的選択として「BとCの中間ややB寄り」を志向している。しかし2004年は選挙年にあたるため、痛みの伴うドラスティックな構造改革は絶望的であり、当面はずるずると「BとCのC寄り」で推移するのではなかろうか。
「今後パラオがどうなるか」は、大統領選挙などの国内情勢、国際情勢、突発的事件などが複雑に絡み合うので予測することはできない。しかし、パラオがこれまで通りの経済構造の中で、太平洋島嶼国トップの国民所得を維持するのには限界が来ていることだけはたしかであろう。
付記:本稿は2003年11月8日におこなわれた「太平洋諸島地域研究所:第一回研究大会」において発表した内容をもとに、その後の情勢等をふまえながら執筆したものです。本稿の執筆にあたっては、パラオ会計監査院のNino
Tewid 氏、在パラオ日本大使館の三田貴専門調査員に多くの情報提供をいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。
(2004年1月8日脱稿)
<参考資料1>自由連合協定とコンパクトマネー
パラオはアメリカとの自由連合協定(通称「コンパクト」)によって、アメリカから様々な経済援助を受けている。これは独立時(1994年10月1日)から15年間に及び、2009年に終了することとなっている。しばしばその代表格として「一般財政援助」の金額が語られるが、これ以外にもコンパクトでは使途や目的に応じて細かく分けられた形で援助額が規定されている。そしてこの中で、金額が明示されておりかつパラオ政府に直接資金供与されるものを、通常「コンパクトマネー」という。
コンパクトの中には、協定の中で定められ、金額も別途交渉で合意されているものの、アメリカの予算管理下で行われているためパラオ側に資金引き渡しのないバベルダオブ島周回道路(通称「コンパクト道路」)の建設事業や、明示的に金額が示されていない援助、たとえば技術協力やアメリカ連邦プログラムの適用などもある。またコンパクトマネーについても、一部では協定で示された供与額がインフレ率によって補正されることになっている。このため、コンパクトによる正確な援助総額を、援助終了以前に算出することは不可能である。ときおり「15年間の援助総額は4億4200万ドル」などという記述がされることもあるが、必ずしも正確ではない。
コンパクトマネーは、パラオの予算法上では「○○の支出にコンパクトの△△項による資金から☆☆ドル」というような形で計上されている。また会計監査報告では、政府本体会計は、@一般会計(General)、A特別会計(Special
Revenue)、B償還金会計(Debt Service)、C公共事業会計(Capital Projects)の4つに分けられているが、コンパクトマネーは財政援助分(§211(a))が@に、社会基盤整備資金援助分(§212(b))がBの中に含まれ、上記及び信託基金援助分(§211(f))を除く分はAに含まれている。
コンパクトマネーの支給は、FSM、RMI、パラオともに15年間を期限としていた。2001年に15年が経過したFSMとRMIは、援助条項に関する改定交渉をアメリカと行い、「改定コンパクト」(「第二次コンパクト」という表現もときおりなされる)を締結して、今後もアメリカの財政援助を受けることがほぼ確定した(FSM、RMI側の批准待ち)。「2009年以降分」としてすでに信託基金用資金を受け取っているパラオと他の2国とでは若干状況が異なるが、少なくともパラオ政府は延長交渉は当然行われるものと考えており、パラオ政府筋によるとアメリカも交渉のテーブルに着くことには原則合意しているとのことである。
コンパクト第2章で定められている援助の内容は次ページの通りである。
コンパクトによるアメリカの対パラオ援助の内容(協定第2章仮訳)
第1条 無償援助
§211(a)【財政援助】最初の4年間1200万ドル、次の6年間700万ドル、最後の5年間600万ドルが供与される。加えて5年度目からは信託基金から500万ドルまで使用できる。
§211(b)【エネルギー援助】エネルギー関連分野用として最初の14年間年額200万ドルが供与される。
<注>その後の付帯協定により、初年度に総額2800万ドルが一括して供与された。
§211(c)【通信援助】通信関連分野用に、15年間年額15万ドルが供与される。またこれとは別に初年度に150万ドルが供与される。
§211(d)【目的限定援助】(1)海域警備と調査、(2)医療保健、(3)高等教育奨学金、を目的として、15年間年額63万1000ドルが供与される。
§211(e)【海洋関連追加援助】§211(d)(1)の活動のために、66万6800ドルが供与される。
§211(f)【信託基金援助】初年度に6600万ドル、3年度目に400万ドルが拠出される。
§212(a)【道路建設】アメリカは別途合意による道路建設を5年以内に完了する。
§212(b)【社会基盤整備資金援助】社会基盤整備用資金(capital account)として、初年度に3600万ドルが供与される。
§213 【軍事影響対策資金援助】第3部第2章(防衛施設と使用権)に鑑み、軍事活動の影響対策費として初年度に550万ドルが供与される。
§214 【信託統治資金の移管】信託統治政府が承認済みの資金は、当初目的に従って使用されることを前提に、アメリカ政府からパラオ政府に支払われる。
§215 【物価上昇補正】§211(a)、§211(b)、§211(c)、 §212(b) の援助額は、アメリカの物価上昇率の3分の2と、7%の小さい方の割合で補正される。
第2条 プログラム援助
§221(a)【援助プログラムの継続】信託統治下で行われていた(1)気象サービス、(2)郵便サービス、(3)連邦民間航空運営サービス、(4)民間航空通信サービス、のプログラム援助は継続される。
§221(b)【医療・保健分野への援助】(1)年額200万ドルを§232による別途合意に従い、(2)教育関連に初年度430万ドル、2年度目290万ドル、3年度目150万ドルが供与される。
<注>条文を見る限り(1)の「200万ドル」は16年目以降も継続されると思われる。
§221(c)【エネルギー分野での支援継続】
§221(d)【調査権】アメリカは調査権を持つ。
§222 【技術援助優先権】パラオはアメリカ政府各省庁に技術援助を要請でき、アメリカは優先的にこれに応える。
§223 【教育援助の移行】発効日に教育援助を受けている者は、4年を限度に継続される。
§224 【追加無償援助】両国は随時、別途無償援助の合意を締結できる。
(1)2001年4月13日に第二回定例議会冒頭で発表した2001年施政方針演説より。
(2)パラオ政府は、1998年以降「年次統計」を発表しており、その中に会計監査報告を出所とする各年度の政府支出統計が掲載されているが、余剰金(留保金)残額やコンパクトマネー以外の海外援助額については記載されていない。また毎年の予算法案提出時に政府は付属文書として財務状況報告書を議会に提出しているが、統計処理方法が異なるため「年次統計」数字と一致しない。外部による経済・財政分析としては、ハワイ銀行が数年に一度Economic
Report をとりまとめて発表しているが、その中の「Public Revenue/Spending」も範囲が不明確で、かつ余剰金(留保金)についての言及はされていない。このほかにも筆者はパラオ政府が随時まとめた資料やIMFによる統計資料を入手したが、統計処理方法がまちまちで数字が一致しておらず、独立後の財務状況全般を俯瞰できるものはなかった。
(3)ただしバベルダオブ島周回道路建設費用は、パラオ政府を経由せずアメリカ政府が直接支出しているため、表2には含まれていないことに留意。
(4)Bank of Hawaii and East-West Center, Republic of Palau Economic
Report, April 2003.
(5)信託基金の取り崩しは、協定上、500万ドルが単年度歳出の上限として設定されている。この年500万ドルを使用した政府は、その後も毎年500万ドルを予算に組み込んでいる。
(6)コンパクト§211(b)によるもの。コンパクトによる援助内容の詳細は参考資料1を参照願いたい。
(7)Palau Horizon, 2003.12.5-8.
(8)この原因を大統領は「SARSやイラク戦争などの外的要因による景気後退」(Palau Horizon, 2003.11.11-13)とし、政府歳出規模の縮小には言及していないが、筆者は後者の要因も大きいのではないかと考えている。
(9)バーチャルパチンコとは、インターネット上に本物さながらのパチンコサイトを開設して、カード決済によるギャンブル事業を行うとするもの。ナカムラ政権時代に特別法が制定され、日本の業者と地元資本が合弁会社を設立して契約が行われた。当初説明では年間250万ドルのライセンス量と純益の4%がパラオ政府に支払われることになっており、年間700万ドル程度の政府収入をもたらすと宣伝されていた。
(10)議会サイドはこれによる税収増を160万ドルと試算しているが、政府は「非現実的」と批判している。
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