PACIFIC WAY

太平洋諸島情報(2003年7月〜10月)      


◆トピック : PIFの新事務総長に初めて豪州人を選出
 
PIF新事務総長に豪州出身のアーウィン氏を選出
 8月14日から16日まで、ニュージーランドのオークランドで第34回フォーラム首脳会議が開催された。今回の会議ではソロモン諸島の治安回復に向けた地域協力や航空分野での市場統合等が主に討議されたが、それ以上に高い関心を集めたのは次期事務総長選挙だった。
 2期6年事務総長を務めたレヴィ現事務総長(PNG出身)の後任者をめぐっては、早くから豪州が元外交官のアーウィン候補を立てて名乗りを上げ、これに対して事務総長ポストは島嶼国出身者であるべきだとする島嶼国側から懸念と警戒の声が挙がっていた。
 しかし島嶼国側では候補者の一本化に失敗、結局カバリク(トンガ元教育大臣)、タガロア(サモア天然資源環境大臣)、ビンス・クロドゥマー(ナウル国連代表)とアーウィンの4候補者が立ち、8月16日に行われた首脳による秘密投票の結果、豪州政府の強いバックアップを受けたアーウィン候補が他候補を抑えて次期事務総長に選出された。
 
豪州の積極介入姿勢の象徴:島嶼国側に警戒感
 豪州が今回、強力に事務総長ポスト獲得に乗り出したのは、このところ太平洋島嶼地域に対して積極的に介入を図るハワード首相の政策の一環であるとの見方は、地域ではほぼ異論がないところだ。特に今回の事務総長選挙は、豪州が7月にソロモン諸島への軍隊派遣を主導し、またPNGに対して援助の適正使用を監視すべく政府中枢への豪人顧問を受け入れるよう要求を始めた時期と相前後したため、ひときわ強い反応があがった。
 1970年代にも首相を務め、設立初期からPIFに関わっているソマレPNG首相は、「秘密投票という形式をとったことに始まる今回の結果は、伝統的なパシフィックウェイの喪失に他ならない」とし、「事務総長は過去30年間、島嶼国出身者のポストで、そのいわば交換条件として太平洋島嶼諸国は国連をはじめWHOやWTO、APECなどの国際機関で豪州とNZを支持するという暗黙の了解があったのだ」と説明、「オーストラリアによる援助削減の脅迫が今回の結果に繋がった」と極めて強い調子で失望感を表明した。8月18日付のパックニュースは、「ハワード首相はアーウィン勝利のため、島嶼国指導者との非公式会合で、『もしアーウィンが敗北すれば傷つく(wounded)ことになる』と語り、島嶼諸国の間にアーウィンを落とせば豪州からの援助が削減されるのではないかとの懸念が広がっていた」と報じている。
 またフィジーの元外相で現在オークランド大学客員研究員のバンバ博士は、「オーストラリアがPIF事務総長職確保に熱心なのは、太平洋でそのアジェンダを強制するための圧力を強化するために他ならない」と断じている。
 
豪州のリーダーシップに期待する声も
 こうした中で議長国を務めたNZは、ゴフ外相が「その任に最適な人物がたまたま豪州出身者だったにすぎない」と語るなど、過剰反応を警戒する動きを見せている。他方、島嶼国サイドにも、この間PIFが地域の様々な問題に効果的な役割を果たせなかったとの思いから、地域の大国である豪州の後ろ盾を得たアーウィン新事務総長がPIFの組織改革を強力に推進するのではと期待する声もある。特に、2000年のフィジーとソロモン諸島における混乱に対して迅速な対応ができず批判を受けてきたレヴィ事務総長は、今回のアーウィン氏の指名を歓迎しているように思われる。レヴィ事務総長は6年間の経験を総括して、「PIFには地域における政策責任がありながら、地域で勧告された政策問題に取り組む職権が与えられていない」と指摘、「現在のPIFでは、組織としても事務局としても今後生じるであろう様々な問題に取り組む能力を持っていない」として、事務総長の役割と事務局機能を再検討する必要性を強調している。
 また、豪州が問題視し、議論の的となっている援助の適正化についても、島嶼国の政治家の側から、「島嶼国の政治家は透明性と責任性の重要さを理解しておらず」「『パシフィック・ウェイ』という表現ですべてを正当化しようとしている」(クック諸島ラスマッセン議員)との声も出ている。
 
PIF機能強化の大きな一歩か?
 結局、様々な駆け引きや議論があったとはいえ、結果的に島嶼国のリーダーたちは豪州のリーダーシップを受け入れた形となった。南太平洋大学のSターテ講師は、「島嶼国リーダーたちは、彼らが設立した組織のコントロールを失うかもしれない。しかし他方、これまでフォーラムが目標を達成できていなかったとすれば、それが何故なのか検討すべきであり、アーウィン事務総長の誕生はそのいい機会だ」と語る。またパシフィック・マガジン誌10月号では、著名なジャーナリストのフィールド記者が、「これまで事務総長は島嶼国政治家の『第二の人生』のポストであった」とし、今回の決定はそうした悪弊から脱却する第一歩だとしている。アーウィン次期事務総長は、豪州の対島嶼国外交ポストを歴任し、サモア人を夫人に持つ人物で、地域への造詣も深く、その能力は高く評価されている。アーウィン次期事務総長は、今後豪州政府のバックアップを得、議長国ニュージーランドと調整しながら、PIFのこれまでの体質に風穴を開けていくことは恐らく間違いないであろう。それが「域内大国の求める太平洋地域」の具現化なのかどうか、来年1月のアーウィン新体制発足後、しばらくは目が離せない状態が続きそうだ。                                                            
(小川和美)
 (参考:PACNEWS,8.11/12/18/19/20/29,2003)

◆地 域
 
豪ドルが地域共通通貨に? 豪州の提案をメディアが報道
 オーストラリアのエイジ紙は、ハワード首相がPIF総会で示した政府文書を入手したと報じた。同紙報道によると、オーストラリアは、豪ドルの共通通貨化、地域機関の統合、国際犯罪とテロに取り組む地域組織の設立などの急進的提案を行ったとのこと。同紙に対してハワード首相は文書の存在を認めたが、中身についてはコメントを拒否したとしている。
 先週豪州では、EU型の「太平洋連合」と、豪ドルの地域共通通貨化を主唱する上院報告があったが、ハワード首相は「あり得ない話だ」と一蹴していた。しかしエイジ紙が入手した政府文書では、地域中央銀行と単一通貨制採用も視野に入れながら「金融及び為替政策を統合する利点」を検討するよう太平洋諸国に訴えているほか、労働市場の統合、統一的警察官訓練、金融取引と不正資金浄化の監視・調査機関として「金融諜報機関」の設立と金融情報の共有化、さらには複雑化する国際犯罪とテロに対応するための体制の構築、地域航空会社の可能性など、豪州を中心とする地域統合に向けた積極的な提案が列挙されている。
 他方、地域統合・グッドガバナンス・汚職追放と経済援助とをリンクさせる豪州の姿勢には、ソマレPNG首相が「主権侵害だ」と反発するなど、強い拒否反応も出ている。地域NGOの太平洋問題センター(PCRC:本部スヴァ)のリニ所長(ヴァヌアツの故リニ首相の妹)は豪州提案を、太平洋諸島の支配を目指した「植民地再建設のプロセス」であり、「共通化」はまず主権尊重と真の友好関係に基づくべきだとし、豪州の経済援助と引き替えにこれを受け入れることのないよう、各国政府に求めている。
(PACNEWS,8.18/20/21,2003)
 
「オープンスカイ政策」をめぐって各国が綱引き
 先にポートビラで行われた航空閣僚会議で合意された太平洋諸島航空サービス協定(PIASA/Pacific Island Air Services Agreement)をめぐり島嶼諸国間で綱引きが続いている。
 PIASAは、貿易と観光促進のため航空分野の市場統合を目指し、3年ないし30カ月の移行期間を経て、誰でも自由に市場参入できる「オープンスカイ政策」を導入することを柱とし、批准6ヶ国で発効することになっている。8月のPIF首脳会議後に署名が開始されたが、署名したのはナウル、クック諸島、ヴァヌアツ、トンガの4カ国のみ。国営エア・パシフィックを抱えるフィジーは、収益のあがっている同社にとっての脅威になるとして署名を拒否しており、またニウエも慎重姿勢を見せている。PIF事務局のギルド航空顧問は、「航空分野の市場統合は路線拡大に繋がり、観光業が発展するとともにコスト削減にも通じる」として慎重姿勢を見せる各国に理解を求めている。
(PACNEWS,8.14/25,2003)
 
南太平洋鯨類サンクチュアリーが拡大
8月20日、ニューカレドニアが鯨類サンクチュアリーを設定した。先にヴァヌアツとフィジーも同様措置をとっており、これで南太平洋における鯨類サンクチュアリーは総計1350万平方キロメートルに達した。鯨類サンクチュアリーを推進するオーストラリアのケンプ環境大臣は、「目標は2008年までにサンクチュアリーを2000万平方キロまで拡大することだ」とし、「クジラの回復は過去200年の無秩序な捕鯨からゆっくり復旧しているだけである」と語った。
(PACNEWS,8.21,2003)
 
フランスも「太平洋島サミット」を開催
7月28日、はじめでの「フランス・オセアニア首脳会議」がパペエテで開催された。これはシラク大統領の呼びかけによるもので、同大統領は太平洋地域の首脳たちに対し、文化交流の拡大、災害救助における協力強化などを提案し、フランスと太平洋諸国との友好・協力関係促進をアピールした。会議後シラク大統領は、太平洋地域向けの援助を250万米ドルから500万米ドルに拡大すると発表、記者団に対し、「フランスはこれまで太平洋地域の安全保障と開発問題に取り組んできたが、今後はさらに政治的・経済的絆を深めるとともに、直接またはEUを通じて開発援助を進めていきたい」と語った。また今回の首脳会議にはオーストラリアが欠席(トンガも国内事情を理由に直前に参加を取りやめ)したが、シラク大統領はオーストラリアが主導するソロモン諸島再建に理解を示しつつ、オーストラリアとも深い協力関係にあることを強調した。
(PIR,7.29/8.4/PACNEWS,8.8,2003)
 
中国がSPTO加盟を表明
 中国が南太平洋観光機関(SPTO/South Pacific Tourism Organisation)への正式加盟を表明した。これはPIF首脳会議に出席した中国代表団が8月18日の域外国対話で正式表明したもの。SPTOのアコロ代表(CEO)は歓迎の意を示している。SPTOでは、観光のグローバル化の進行と、開発パートナーが観光セクター開発支援の鍵を握るとの認識から、2001年に域外国の加盟を認める決定を行っており、中国の加盟が認められれば初の域外正式加盟国となる。SPTOでは、PIFメンバー中の6つの非加盟国(オーストラリア、ニュージーランド、マーシャル諸島、パラオ、ミクロネシア連邦、ナウル)の加盟を求めると同時に、日本、インド、アメリカ及びフランスにも加盟と開発パートナーになることを呼びかけている。
(PACNEWS,8.19,2003)
 
ジョンストン空港閉鎖が太平洋の航空路線に影響
 アメリカ政府のジョンストン島空港施設閉鎖の決定を受け、太平洋諸国では代替空港の整備が急務となっている。ジョンストン島は、サモア、トンガ、フィジー、ニュージーランドの各航空会社のオセアニア=アメリカ路線の緊急燃料補給地として指定されている。
 8月に行われたPIF首脳会議後の域外対話において、PIF諸国側はアメリカ代表団に対して、12月26日に予定されているジョンストン空港の閉鎖延期と、関連施設の供与を要請したが、アメリカ側は「すでに諸手続が終了しており遅きに失した」として要請を拒否した。
 現在ジョンストン島閉鎖後の代替空港としてはキリバスのクリスマス島が有力視されているが、空港施設の強化が必要であり、その費用は最低40万ドルが必要と見積もられている。PIF事務局では、キリバス政府によるクリスマス島施設改修のため、関係各国間で資金拠出の折衝が進んでいるとしているが、もし12月26日までにクリスマス島の準備ができなければ、最悪の場合、準備が整うまで各国のオセアニア=アメリカ路線が運休に追い込まれる可能性もあるという。
(PACNEWS,8.14/20,2003)
 
MSGが事務局をポートヴィラに設置へ合意
メラネシアスピアヘッドグループ(MSG)は、ポートヴィラに常設事務局を設置することを決定した。これは7月にソロモン諸島ウェスタン州で行われた第15回首脳会議で合意したもの。事務局は新築されるヴァヌアツ外務省庁舎内に置かれる可能性が高い。
(PACNEWS,8.20,2003)

◆パプアニューギニア
 
援助介入問題をめぐりオーストラリアとPNGが対立
 8月に入り、オーストラリアが、PNGへの年間約3億豪ドルの財政援助を再検討し、同国からの財政・行政サービス・秩序維持にかんするアドバイザーの派遣を受け入れるようPNGに対して要求したことから、両国の対立が生じた。
 PNGの国家財政は、毎年オーストラリアから得る財政援助に大きく依存している。
PNG政府は、7月のRAMSI派遣決定に際してオーストラリアのメラネシア諸国への「過剰な」介入の可能性への懸念を表明しており、8月のPIF首脳会議においてこうした「介入姿勢」をオーストラリアが鮮明にし、オーストラリア人が事務総長に選ばれたことに対して強い不満を表明していた。こうした中でのオーストラリアからの要求に、ソマレ首相をはじめPNG政府当局は強く反発した。オーストラリア政府は、8月27日にコットン(Robert Cotton)特使をポート・モレズビーに派遣、PNG政府に対して事情説明を行ったが、PNG側の理解は得られなかった。
PNG政府が内政干渉に通じるとして強く反発する中、オーストラリア側も「国民の税金の使途を厳しく監視するのは政府として当然のこと」、「オーストラリア政府はオーストラリア国民に説明責任がある」とし、「国民からもPNGへの不信感が強まっている」などとPNG側の反発を牽制する一方、「こうした要求はこれまでの合意事項を適切に実施するための措置にすぎない」とPNG側に理解を求めた。
こうした中で9月17日にダウナー外相がPNGを訪問して改めて本件協議を行った結果、オーストラリア側がPNGへの援助を継続するという政策方針そのものを変更する意図はないことを明言したことによって、PNG政府はオーストラリアの提案を受け入れることを表明した。
(PIR,7.9,2003)
 
依然として噴出する国内のエスニック対立
 PNG国内で相次ぐエスニック問題は依然として明るい見通しがなく、警察当局は無力なまま、治安悪化と住民の不安に解消の兆しが見えていない。
 とくにここ数ヶ月では、首都ポート・モレズビー近郊のナイン・マイル居住区での、南ハイランド州タリ人とセントラル州ゴイララ人との抗争が激化しており、暴行・殺人事件が連日のように報道されている。
 また、エンガ州各地の部族抗争も頻発している。7月7日には、エンガ州の実業家が殺害された報復として、24歳の看護婦が、その実業家の殺害現場近くのアイパンダ地域の女性と誤解され、射殺されるという事件が起こった。
 このような状況の下、国民からは、警察の改革と刑事罰の強化を求める声が高まっている。
(PIR,7.8,2003)
 
石油輸出が好調
 今年7ヶ月間のPNGの石油輸出額が、昨年同期の8億5560万キナから33%増え、11億キナに達した。これは、輸出量が8.8%増加して1030万バーレルに達したこととともに、石油価格の上昇が原因。
 こうした中で7月には、60億ドルをかけて建設されたガス・パイプラインを通じて、オーストラリアのComalco社がPNGから天然ガスをクイーンズランドの精製施設に送るという契約もなされた。
(PIR,7.9/8.19,2003)
 
韓国の企業、PNGのキャッサバ農場に投資
 韓国のBohae Groupが600万ドルを投じ、PNGのキャッサバ農場の開発・耕作に乗り出すことになった。計画によると、キャッサバ農場の経営が軌道に乗れば、さらに2000万ドルを投資し、エタノール精製工場を建設する予定。
(PIR,8.7,2003)

◆ソロモン諸島
 
豪州中心の地域支援団がソロモン諸島に展開
 治安回復と財政再建に解決の見通しを失ったソロモン諸島政府は、オーストラリア主導による国家再建を受け入れ、7月、軍を含む強力な地域支援団がソロモン諸島に展開した。
ソロモン諸島では、マライタ島出身者とガダルカナル島土着住民との間のエスニック紛争勃発以降、政府の統治機能が大きく低下している。これは、1997年から98年にかけて起こったアジア金融危機の影響の下で、公共予算の大幅削減により生じた若者の失業問題によって火がついたとも報じられているが、1998年の紛争勃発以来、医療や教育を含め行政サービスは著しく後退し、経済は25%も縮小したといわれている。
 6月末、ソロモン諸島政府の要請を受け、オーストラリアのハワード首相は、このままではソロモン諸島が麻薬取引、マネー・ロンダリング、およびテロの温床と化す恐れがあるとして、同国の秩序回復と財政再建に向け、7月末までに、2000名規模の人員(うちオーストラリア人は警官300名、兵士1200名)から成るRAMSI(Regional Assistance Mission to Solomon Islands)を派遣する計画を発表した。PIF加盟諸国は6月30日にシドニーで開かれた臨時外相会議でこの計画を全会一致で支持、これを受けてニュージーランド(警官35名、兵士105名)、フィジー(兵士120名)、PNG(警官40名、兵士44名)、トンガ、クック諸島およびサモアが相次いで参加を発表した。
 7月18日、ソロモン諸島議会はRAMSI派遣を法的に正当化する法案を可決、これを受けて7月24日、オーストラリア空軍機(C-130 Hercules)と海軍艦船(HMAS Manoora)で輸送された警官200名と兵士200名がホニアラに到着し、RAMSIの活動(作戦名“Helpem Fren[help a friend]”)が開始された。
 ソロモン諸島に展開したRAMSIがまず行ったのは、民兵らの武装解除。不法に所持する武器を8月21日までに提出するよう布告し、これに従わなかった者を厳しく取り締まるとした。またモレル(William Morell)警視総監は信頼を失った警察の立て直しのため、全警官に対して7月28日までに不法に所持する武器を提出するよう通告し、これを受けて24の銃器が提出された(そのうち20の銃器は警察から流出したものであつことが明らかとなった)。
RAMSIはこれと平行して、武装グループの指導者たちとも積極的に接触した。RAMSIのワーナー最高責任者(Nick Warner)は、7月末に、MEF(マライタ・イーグル・フォース)の指導者の一人であるラスタ(Jimmy Rasta)と会い、ラスタは8月15日までにすべての武器を放棄することを約束した。またガダルカナル島ウェザーコーストを拠点に殺人、誘拐、放火、破壊活動を重ね、治安回復のための焦点になると目されていたGFL(ガダルカナル解放戦線)の指導者ケケ(Harold Keke)も8月4日朝にRAMSIに投降、逮捕された。 
 こうして、RAMSIの展開によって、これまで同様布告に従わなかった各村民たちも次々と武器を放棄し、RAMSIは8月21日の期限までに3850あまりの武器回収に成功した。
 またソロモン諸島政府には多数の豪州人アドバイザーが派遣され、政府機能再建も着手されている。
こうしてソロモン諸島の紛争解決と政府再建問題はRAMSI展開以降劇的に好転したと伝えられており、9月に入るとオーストラリア政府はソロモン諸島への渡航中止勧告を解除した。他方、その一方では、依然としてケケの支持者たちが離村を襲い、教会や家屋を破壊しているとの報告や、ウェザーコーストの森の中に30名以上の人質を抱えて立てこもっているという報告もある。
(PIR,7.9,2003)

RAMSI派遣に伴い財政支援本格化
 RAMSI派遣によりソロモン諸島の秩序回復が進むに応じて、同国に対するオーストラリアを中心とする財政支援の動きが本格化しつつある。
 まず、オーストラリアはニュージーランドと協力して、ソロモン諸島が国内外に抱える負債(3億5200万豪ドルともいわれている)を肩代わりすることを決めた。すでに、オーストラリアはRAMSIを通じて同国が世銀とアジア開発銀行に対して抱えていた300万米ドルを返済し、これにより同国に対する両機関による融資再開への道が開かれつつある。また、ニュージーランドも、ホニアラへの電力供給費用59万5000米ドルを支援することを発表した。
 なお、ソロモン諸島の経済復興には総額で10億豪ドルが必要との試算もある。
(PIR,7.9,2003)
 
◆ヴァヌアツ
 
ヴァヌアツへの渡航者若干減少
 今年前半のヴァヌアツへの渡航者の数は昨年同期と比較して6.3%減少した。
 減少したのは、ニュージーランドの17.3%、他の太平洋諸国の14.5%、ヨーロッパの3.2%など。逆にニューカレドニア(6.9%)、北米(39.6%)、日本(7.4%)などからの渡航者は増加している。ちなみに渡航目的は、観光が80.2%、ビジネスが17.8%、訪問が8.7%となっている。
(PIR,8.29,2003)
 
ヴァヌアツ外相、アチェ州独立運動支援の報道を否定
 ヴォホール外相は、ヴァヌアツ政府が、インドネシア・アチェ州の独立派団体(Free Aceh Movement)のポート・ヴィラでの事務所開設を許可したとの、AP通信報道を否定した。ヴァヌアツ政府は、先にインドネシア・パプア州の独立派団体(the Free Papua Organization)に対し事務所開設を許可しており、インドネシア政府はヴァヌアツ政府の動きに神経をとがらせている。
(PIR,9.3,2003)

◆ニューカレドニア
 
セントルイスのカナクとウォリス・フトゥナコミニティ間紛争再燃
ヌメア郊外の町セントルイスで、2001年12月以来確執が続いていたカナク人とウォリス・フトゥナ人の間の紛争が、およそ7ヶ月間の中断を経てこのほど再燃している。今回の闘争の発端は、6月25日火事になったメラネシア人伝統の小屋の消火活動にあたっていた男が撃たれたことで、この不意打ちに抗議するための一団が町のメインストリートに繰り出した際に銃撃戦が始まった。通報を受けた警察当局は装甲車と重装備警察官の一団を派遣し、25名のウォリス人女性と子供たちをボウラリの体育館へ避難させ、一帯を封鎖して事態の沈静化に努めた。幸いにも、この銃撃戦で死者は出なかったが、3名のウォリス人、1名の修道女およびフランス憲兵1名が負傷した。続く29日にも銃撃戦が発生、カナク側青年5名が負傷し、うち一人が重傷を負った。またこの騒動では家屋2棟が全焼した。警察当局は、同地区全体を完全に封鎖し、催涙ガスを使って群集を追い払った。
2001年末に紛争が始まった当時、アヴェ・マリア教会を中心とした同地区には、1960年代以降にウォリス・フトゥナから移住した171世帯が生活していた。そしてカナク側が彼らの立ち退きと土地の返還を求めたことが一連の紛争の引きがねとなった。3名の死者と多数の負傷者を出した一連の騒動の後、双方の代表者によって2002年11月に平和的解決のための合意がなされ、ウォリス・フトゥナ人はこの地から自主的に立ち退くこととなり、今年6月までにおよそ90世帯が立ち退いていた。しかし、残り87世帯が依然として新居がみつからずこの地に留まっている状況に再びカナク側の不満が高まっていた。
今回の闘争で避難しボウラリの体育館に収容されているウォリス・フトゥナコミニティーの人々に対して、領域政府と南部州はその解決策としてヌメア郊外のドゥンベア (Dumbea) にある公共住宅への居住を提案している。しかしその一方で、政府は、財産の損失に対する補償は難しいと表明している。これに対して、移住希望家族たちは、8000万USドルを超える補償金の支払いを求めている。他方、受け入れ先と目されているドゥンベアでは、全世帯の受入に懸念を表わしている。同地区のB.マラン (Marrant) 区長は、そうした提案は全く打診されておらず、このコミニティーの転居問題の解決はヌメア近隣のすべての町区で共有されるべきだと主張している。
小競り合いが続く中、警察当局は8月25日早朝、セントルイス地区で異例の大規模な家宅捜索に踏み切った。この捜索には、昨年以来の事件における殺人犯を捜索するための令状が用意され、フランス軍から2機のヘリコプター、装甲車10台、トラック十数台が投入されて、200名を超える警官と軍の特殊部隊が動員された。カナクコミニティーから投石を受けた2名の憲兵が負傷し家屋三棟が全焼したが、捜索隊は10名の容疑者を拘束し、数十の銃器および実弾500発以上を押収した。この電撃的な踏み込みに対して、カナクの不満は増大しており、カナク青年たちは、警察当局のやり方はカナクたちを暴力の論理に駆り立てることを目的にしていると強い非難を浴びせている。また、血気にはやる青年たちをなだめてきたコミニティの長老たちは、交渉も無く不意を突く当局のやり方にもはや青年たちを抑えることはできないと表明している。
一方、2002年1月8日の銃撃戦で撃たれ翌月2日に死亡したカナク青年の殺害容疑で身柄を拘束されていたウォリス人のL.ヴィリ (Vili) 容疑者が、今年9月はじめフランスで釈放された。ヴィリ元容疑者は、フランスのモンペリエのラグビーチームで活躍するキープレーヤーであったが、昨年8月に同地で逮捕されていた。同元容疑者は、カナク青年の検死解剖の結果発見された弾丸の破片と類似した口径の銃を事件発生当時所持していたと証言している。しかし、このほどフランス本国での判決で贖罪が確定し、およそ1年におよぶ容疑から解放された。
(PIR,6.30 − 9.10,2003)

シラク仏大統領来訪、先住民カナクに不満を残す
 フランスのシラク大統領は、7月23日から大統領就任後初めてニューカレドニアを訪問したが、先住民カナクに様々な不満を残していった。到着後、大統領は同領域政府のフロギール領域大統領ら政府関係者と会談したほか、各州の首長や議会議員、およびウォリス・フトゥナからの使節と面会した。しかしながら、先住民の権利に関しての意見を表明すべく、別途に会談を要求していたカナクの首長たちとの会談は時間がないことを理由に拒否された。
 また、主にカナクで構成される労働組合USTKEは、シラク大統領訪問に合わせてストライキを決行し、仏高等弁務官事務所付近におよそ2000人が集結してデモ集会を行なった。最初の2日間は事務所前でバーベキューを開いたりしながら行なわれていた抗議運動には、その後数百人にのぼるCU (Caledonian Union) やFLNKSなど独立支持派政党の構成員や過激な支持者も加わり、大きなかがり火を燃やすなど、抗議がエスカレートしていった。このため、警察は抗議者たちを追い払うために催涙ガスを使用する事態へと拡大していった。
 さらに、シラク大統領訪問後に実施が予定されていた人口統計調査の中の人種関連項目が、大統領の意向で削除されたこともカナクに大きな波紋を投じている。すなわち、シラク大統領は、フランス共和国は人種に基づいて人民を決定しておらず、人種を尋ねることは違法であり、なによりも「あなた方はすべてフランス人民だ」と発言した。この発言に対する反発はカナクばかりでなく、ニューカレドニア人権連盟 (New Caledonia's Human Rights League) も強い批判を表明している。同連盟のE.ポイゴウネ (Poigoune) 会長は、人種の差異を無視することは先住民の存在を無視することであり、カナクがいるニューカレドニアを国連が非独立地域と認めていることからしても、それを否定するフランスの立場の方が人権侵害にあたると述べている。将来独立の是非をめぐる住民投票が控えているために、投票者を決定する上でも人種に関する調査も含めた人口統計の実施は、今後の大きな課題になろうと予測される。
(PIR,7.23−8.6,2003)
 
◆サモア
 
自動車輸入制限法施行、右ハンドル車の輸入禁止
 サモアでは、同国に輸入される自動車の流入を管理することを目的とした輸入制限に関する新法がこのほど施行された。新法による規制対象は、1995年以前に製造された中古車と製造年に関係なくすべての右ハンドルの車である。サモアでは、7年前の輸入税の削減に伴ない近年中古車の流入が急増していた。そして、そのほとんどがニュージーランドに在住するサモア人から、サモア本国の親戚に送られた中古の右ハンドル車であるという。サモア港湾局 (Samoa Port Authority) によれば、新法施行前の1 週間だけでも300台が同国に到着しており、そのほとんどが右ハンドル車であったという。
この法規制によって、基本的に右ハンドル車が流通するニュージーランドからの自動車の輸入は事実上禁止されたことになる。このことは、新車にせよ中古車にせよニュージーランドの自動車の大半を占める日本車のサモアへの輸入が停止することを意味している。サモアの運輸委員会 (Transport Control Board) は、右ハンドル車の禁止を、より多くの事故を起こしているため交通安全上の理由からだと説明している。ただし、10以上のタイヤを持つ大型トラックに関しては唯一の例外として右ハンドル車が認められている。
(PIR,7.4,2003)
 
議会選挙欠員補充選挙で党人権擁護党が勝利
 このほどサモアで行われた現職議員の死亡による欠員補充の特別選挙で、3名の候補者の中から与党人権擁護党 (HRPP/Human Rights Protection Party )所属のT.ラトゥ(Latu)氏が当選した。今回の補充選挙は、アラタウア西選挙区選出のT.アロファ(Alofa) 議員の死亡によって行なわれたものであったが、このアロファ議員もA.ササ (Sasa) 議員の死亡によって当選しており、同選挙区は2001年の総選挙以来2度目の補充選挙実施ということになる。アロファおよびササ両前議員は共に野党サモア国家開発党 (SNDP/Samoa National Development Party) 所属議員だったが、今日の結果をうけて、与党人権擁護党が議席を一つ増やし、49議席のうち32議席を占めることになった。
(PIR,7.2/8.4,2003)

◆アメリカン・サモア
 
自動車のエンジンオイル多量に行方不明、環境への影響を懸念
 アメリカン・サモアでは近年、多量の使用済み自動車エンジンオイルが回収施設に収集されず、行方不明になっていることがこのほど、現地サモアニュースの報道で明らかになった。自動車局(OMV/Office of Motor Vehicles)によれば、現在1万715台の民間所有の自動車が当局に登録されている。エンジンオイルの交換は、車一台あたり平均して年間1ガロンとされる。そのため、登録数からして領域全体でおよそ1万715ガロンの使用済みエンジンオイルが生じていることになる。しかしながら、同局によれば、過去1年間に個人および自動車整備業者から回収施設に集められた使用済みオイルは、半分にも満たない5千ガロンにすぎず、5715ガロンが行方不明であるという。
 この結果を受けて行政当局は、不明とされる大量の使用済みオイルが不法に投棄された場合の環境への影響を懸念している。すなわち、使用済みのエンジンオイルにはベンゼン、鉛、亜鉛、カドミウム、ヒ素などの有害な化学物質が含まれているため、投棄されたオイルが土壌に沁みこみ、有害物質が地下水に混入するおそれがある。アメリカン・サモアでは、地下水をくみ上げ、飲料水、生活用水あるいは農業用水としている。これらの化学物質が人体に取り入れられれば、ガンや腎臓への障害、幼児の発育異状などの症状を引き起こす。現地行政はオイル回収施設で使用済みオイルを無料で回収しており、不法に投棄しないよう住民に警告している。
(PIR,8.5,2003)
 
中国人不法入国者集団パゴパゴで逮捕
 ニュージーランド国際放送の報道によれば、このほどアメリカン・サモアに不法入国していた中国人の集団が現地犯罪調査情報局の職員によって一斉に検挙された。地元住民から最近街頭で多くのアジア系女性を見かけるという通報を受けた当局は、今回アジア人の出入りが確認されたアパートを調査、適法な入国許可を受けていない中国人女性10名と男性1名を拘束した。拘束された10名の女性はいずれも20歳前後であり、アトゥウ地区での売春を目的に連れて来られたとみられている。
 アメリカン・サモアでは近年のアトゥウ地区で売春問題が表面化しており、今年初めにもアジア系の漁船乗組員相手に不法な売春業を行なっていたフィッシャーメン・ハウスの実体が明らかにされている。一連のアジア系売春婦の不法入国には地元住民や警察官および入国管理局の職員が関与している疑いが報道されているが、真相は依然として明らかにされていない。
(PIR,8.22/8.27,2003)
 
教育局長横領罪で辞職
 横領の罪で論議を起こしたアメリカン・サモア政府のS.サタウア (Sataua) 教育局長は8月下旬、現地議員調査委員会の取り調べに際し、自らの罪を認め、辞表を提出した。タウエセ (Tauese) 前政権から5年以上このポストにあった同局長は、教育局の学校給食計画の中からその計画実施のための公金や備品を一部自宅に配送していた。また、同局の関わる事業計画においても適切な入札無しに談合で契約を与えていたことも明らかにされていた。
(PIR,9.1/9.5,2003)
 
◆トンガ
 
貴族代表議員、予算審議で民主化推進平民代表議員と連携
 トンガ議会の7月初旬に行なわれた政府予算案の審議の場において、概して政府の支持にまわる貴族代表議員の一部が平民代表議員の側に立ち、予算案の一部修正させることに成功した。すなわち、9名からなる貴族選出議員のうち4名が平民代表議員と連携し、閣僚と政府高官のための送迎車に関する予算を30パーセント削減させ、また政府職員の海外出張手当に当てる予算を大幅に削減させた。民主化推進派のA.ポヒヴァ (Pohiva) 議員は、ほとんどの貴族代表議員は概して首相の提案を支持するのが普通であり、とりわけ首相が議会に在席している場合はそうした傾向が一段と強いのがこれまでの通例であったと言う。しかし、このたびの審議では、首相の面前で4名の貴族選出議員が反対の立場に立った。こうした新しい傾向を受けてポヒヴァ議員は、今年2月以降のトンガタイムズ紙問題に端を発し、近く審議が始まる憲法改正問題において貴族議員との連携を期待している。
(PIR,7.8,2003)
 
議会、メディア規制に関する法案を可決
 トンガ議会は、今年初めから一連の論争を巻き起こしているメディアの報道問題に対し、メデアの運営を規制する法案を7月28日、ついに可決した。今回の成立に先立ち、憲法の規定する自由権に抵触する危惧のあるこの法案は、先月行われた投票で民主化推進派の平民選出議員と一部の貴族議員が反対票を投じ、辛くも一票差の反対多数で審議を先送りにしていた。しかし、今回の投票が行われた7月28日は、先の決議で反対票を投じた2名の平民選出議員が外遊中で不在のため形勢が逆転した。
 こうして成立したメディア事業者法 (Media Operator Act) は、トンガにおいて報道、出版事業を行なうマスメディア関連企業はその株式の80パーセントがトンガ人で占められていなければならないことを規定している。この法による規制は、明らかに論争の発端になったトンガタイムズ紙を対象としたものであるとみなされている。つまり、オークランドを本拠とするトンガタイムズ紙の出版者K.モアラ (Moala)代表は、トンガ生れであるがアメリカ市民権を有しており、この規制にひっかかることになる。しかしながらモアラ氏は、同社を完全なトンガ市民である妻名義の会社に合併して規制からのがれる方針で、トンガ議会においてさらなる論争が続くであろうと予測される。
(PIR,7.29/8.1/8.5,2003)

メディア規制に関する憲法修正審議、10月に延期
 7月末に採択されたメディア事業者法 (Media Operator Act) を受けて、9月初旬に予定されていたメディア規制に関する憲法修正の検討審議が、10月に延期された。この延期の決定は、憲法修正を阻止しようとする平民選出議員8名が議長に審議延期を働きかけ、説得に成功したことによる。平民議員たちは、この1ヶ月の間にトンガのいたるところで護憲を遊説し、世論に訴えることを表明している。  議員の一人F.セヴェレ (Sevele) 博士は、来月までに平民から修正反対の署名を集め、審議が再開されたときに提示する意向を示している。政府による出版統制という観点からして、民主化に逆行する憲法修正案であり、今後の動向が注目される。
(PIR,9.4,2003)
 
◆カ・パエ・アイナ:ハワイ州
 
マヌア・ケア天体観測施設建設計画、中断判決下る
 ハワイ州の最高峰マヌア・ケアの山頂でNASAとハワイ大学によって進められていた天体観測施設の建設計画を中断する判決が、このほどハワイ地方裁判所によって下された。この訴訟はハワイ関係局 (OHA/Office of Hawaiian Affairs) によって提訴されていたものである。OHAは、この計画は国立歴史遺産保存法 (National Historic Preservation Act) とハワイ環境政策法 (Hawaii Environmental Policy Act) に反するとして、NASAに環境影響に関する報告を命ずるよう裁判所に求めていた。
 OHAは現在月4万8000ガロンを超えるとされる山頂での汚水処理問題のさらなる悪化を懸念しており、この地は先住ハワイ人にとっての神々の家とされる聖地でありまた古代から先祖たちの墓地としての文化的重要性を主張してきたのである。同地方裁のS.O.モールウェイ (Mollway) 判事は、NASAはこの計画によって拡大することが予測される累積的な影響を分析していないとし、原告の主張を認め、懸案事項を含めた環境影響調査を再度実施することを命じた。
(Honolulu Starbulletin.com,7.17,2003)
 
マクアでの森林火災事故、米軍は責任を認める
 オアフ島のウエスト・コーストに位置し、先住ハワイ人にとって神聖な地とされるマクアで7月22日大規模な火災事故が発生し、米軍はその事故に対する過失を認めた。マクアは現在米軍の保留地とされているが、第二次世界大戦以前から行なわれた一連の軍事演習によって多くの不発弾が残存しており、現在も軍によってその処理が行なわれている。そもそも今回の大規模火災も、不発弾の発見とその地への民間ハワイ人の文化的な訪問のための道を確保する目的で、軍が一定の部分の草原を焼く行動を実行した際に発生した。マクア軍保留地所属のG.エンリクス(Enriques) 防災副長官によれば、軍は当初この目的のために900エーカーの草原を焼くこと予定していた。しかし、当日の気象予測を見誤り、風向と風速の著しい変化によって、目標の地をはるかに超えて2100エーカーの土地を焦がしてしまったのであった。
 元来マクアとは、ハワイ語で両親を意味する。すなわち、ポリネシア人全般に共通して伝承する母なる大地と父なる空が出会う天地創造神話に関わる場所であり、マクアは現地ハワイ人にとっての文化的聖地である。そのため、現地のマクア保存活動団体マラマ・マクアは訴訟を起こし、1998年9月より解決に向けて両者の間で合意がなされるまで軍による活動中断の判決を勝ち取った。その後、マラマ・マクアと軍は、民間人によるマクアへの文化的目的でのアクセスを認めその安全確保のために不発弾の処理を行なうという条件の下で2001年10月に合意がなされ、軍による活動が再開されていた。
 今回の事故をうけて軍は、火ではなく家畜の放牧、人海戦術による草の刈り取り、除草剤の使用などの代替案の検討を表明しているが、そのコスト高を懸念している。他方で、軍は今回の事故による過失を認めながらも、多くの文化的遺産は焼失せず、むしろこの事故によって新たな考古学的発見の可能性を指摘している。しかしながら、先住系ハワイ人の間でマクアの神聖を冒涜したことに対する怒りは大きく、マクアでの軍事活動の停止と撤退を求める要求が再燃している。
(Honolulu Starbulletin.com,7.27/8.8,2003)
 
地方裁がカメハメハ・スクールに非先住ハワイ人の仮入学を指示
 ホノルル・アドバータイザー紙の報道によれば、このほど現地ハワイの地方裁判所は、これまで先住系ハワイ人のみに入学を許可してきたカメハメハ・スクールが非先住系のハワイ人に係争中の間、仮入学の許可を与えるよう法的指示を下した。このたび地方裁によって判決確定までの間仮入学が認められた13歳の学生は、一度入学許可を受けていたが、後に先住系でないことが明らかになった結果、開校1週間前の8月13日に入学許可を撤回されていた。この学校側の処分を受けて、この学生の母が、同処分は人種差別を禁止する連邦憲法に反するとして地方裁に提訴した。
 このたびカメハメハ・スクールに仮入学許可の指示を行なった地方裁のD.エズラ (Ezra) 判事は、当該スクールの先住系ハワイ人限定の入学許可制度が、連邦憲法に反するかどうかの判決はいまだ確定していないことを強調している。そして、同判事は今回の仮指示の根拠として、入学が認められなかった場合の学生のうける潜在的被害は入学を許可した場合に受ける学校側のいかなる損害よりもはるかに重いものになると判断している。しかし、エズラ判事は、あくまでも係争中であることを繰り返し、最終的な判決で学校側の先住民入学制度は合法とみなされ同学生の許可が撤回される可能性も十分あることを付け加えた。
 そもそもカメハメハ・スクールは、カメハメハ王家直径の末裔であるバーニス・パウアヒ・ビショップ王女によって、ハワイ人の教育のため1884年創立された慈善信託施設である。そして、創立以来120年にわたって、先住系ハワイ人の教育を行なっている。学校側はこの指示に対してさらなる訴訟を起こさない意向である。この訴訟に先立って、同年6月同様の訴訟が別に提訴されており、現在係争中である。なお、この6月に提訴された訴訟は、11月18日に判決が下る予定であり、今後の動向が注目される。
(Honolulu Advertiser.com,8.21,2003)
 
先住民の権利擁護活動家8000名がワイキキに集結、カラカウア通りを行進
 ハワイ最大の都市ホノルルではこのほど、先住民の権利擁護を求める活動家たちがワイキキに集結し、メインストリートカラカウア通りを威勢よく行進した。この集会は、同日地方裁判所で予定されていたハワイ関係局 (Office of Hawaiian Affairs)による先住民優遇政策に対する逆差別訴訟にあわせて決起されたものであった。この日同訴訟では主だった判決がなされなかったが、参加者たちは先のカメハメハ・スクールでの仮入学許可の中間判決をはじめ、最近の訴訟に対する先住民の権利擁護が強く主張された。ハワイ人の血を象徴するとされる赤いシャツを着てこの活動の参加した者は、総勢8000人以上にのぼった。
(Honolulu Starbulletin.com,9.8,2003)
 
◆ニウエ
 
ニウエ人民党解散
 ニウエではこのほど唯一の政党として組織されていたニウエ人民党 (NPP/ Niue People's Party) が解党されることとなった。NPPは1990年代に組織され、ラカタニ(S.Lakatani) 党首に率いられて1999年には政権の座についていた。しかしながら、コーラル航空設立計画の頓挫をはじめとする一連の政策の失敗に加えて、党内の役職をめぐる内部抗争が発生、結局解党に追いこまれた。拡大家族や村落に基づく伝統社会の影響が強く残るニウエでは、故R.レックス初代首相をはじめ政党政治は伝統的コミニティを分断するものだとの声も広くきかれる。
(PIR,7.21,2003)
 
ニウエ議会補欠選挙、オケセネ氏当選
 本年7月のH.フヌキ (Hunuki) 議員の急死によって、ニウエ議会議員の欠員補充選挙がこのほど実施された。6名が立候補した同選挙は、トゥアパ (Tuapa) 村からの候補者クリプトン・オケセネ (Krypton Okesene) 氏が、現職のR.レックスJr.議員の妻L.レックス氏やK.マガトンギア (Magatongia) 前教育局長らをおさえて当選を決めた。
(PIR,9.1,2003)
 
◆クック諸島
 
国連食料農業機関、柑橘作物栽培に援助金
 国連食糧農業機関はこのほど、クック諸島で成長を遂げている柑橘作物栽培を促進するための計画に10万USドルの援助金を拠出することを決定した。決定を受けたクック諸島政府当局は、この援助金によってこの先3年間で同領域内のノニ(noni)・フルーツ産業の再建と拡充を計画している。当局筋によれば、この援助金によって、これまで貯蔵施設不足で生産が伸び悩んでいた離島地域での生産量の増大が期待されているという。この計画は、現在クック諸島で輸入品に費やされている年間40万USドル以上を節約することが可能であると見積もられている。ノニ・フルーツは主にビタミンCを多く含むジュースの製造に使われており、ポリネシアのほか、北オーストラリア、アジアの一部で栽培されている。
(PIR,7.9,2003)
 
Eメール詐欺が多発
 ラジオ・オーストラリアの報道によれば、クック諸島で島民をターゲットにした新しい形態の詐欺が多発している。通称「ナイジェリア・レター詐欺」と呼ばれるこの詐欺は、Eメールによって送られ、送信者はナイジェリアを中心としたアフリカ諸国の政府高官を名乗り、余剰金の処分への協力を求め、多額の金を送金するので受信者個人の銀行口座の詳細を教えるように依頼しているという。さらに、警察当局によれば、最近ではメールだけでなく電話によるものも確認されており、とりわけ高齢者や実業家がそのターゲットになっているという。
(PIR,7.14,2003)
 
クック諸島議会、議会改革法案を可決
 クック諸島議会はこのほど、2つの重大な改革法案を採択した。すなわち、一つは憲法修正条項第26条の解釈に関する法案であり、この改正によって海外議席制度が廃止されることになった。もうひとつは、現行の議員任期5年間を4年間に変更することの是非を問う住民投票の実施を次回の総選挙の際におこなうことを定めたもの。クック諸島では最近の4年間で5回の連立政権の成立を経験しており、現行体制の不安定性が大きな問題になっていた。
(PIR,9.11,2003)
 
◆フレンチ・ポリネシア
 
領域議会、政治的地位に関する新たな法案を承認
 フレンチ・ポリネシアの領域議会は7月初旬、本国フランスとの関係における同地域の政治的地位に関する新たな法案を承認した。この法案は、現行のフランス海外領(oversea territory)としてのフレンチ・ポリネシアの政治的地位を「海外自治国(oversea country)」とするものであり、現地の労働市場を調整する権限や一部国際関係にかかわる権限などをパリからタヒチへ移譲することを目的としている。
しかしながら、独立推進派の反対は根強く、同法案は承認要件を満たして採択されたものの、独立推進派の議員たちは決議をボイコットした。同法案反対派の議員たちは、この法案は幻覚であり、フレンチ・ポリネシアのフランスによる保持を強化するだけであるとして、新たな地位は「フランス占領国(French occupied country)」であると強い批難のコメントを発している。
(PIR,7.2/7.7/7.11,2003)
 
フランス議会における代表議席が2議席に増加
 フランスの国民議会はこのほど、議員規定の改正に関する法案を採択し、これによりフレンチ・ポリネシアの議席数が、2007年から2議席に増加することが決定した。また、議員任期は現行の9年から6年に短縮され、3年ごとに過半数が改選されることになる。議員の被選挙権についても35歳から30歳に引き下げられ、議席数も321から346に増加されることになった。
(PIR,7.14,2003)
 
シラク大統領、フレンチ・ポリネシアのPIFオブザーバー参加を提案
 このほどタヒチで開催されたフランス・オセアニア首脳会議に出席したシラク大統領は、太平洋島嶼諸国会議(PIF)でフレンチ・ポリネシアがオブザーバー参加を承認されるよう希望することを表明した。ニューカレドニアはすでに1999年からオブザーバーとして参加が認められている。他方、同地域の核実験の影響問題に関してシラク大統領は、会議後の記者会見の中で、かっての核実験は全く安全なものであったことを繰り返しながらも、もし実験による健康上の悪影響が証明されれば、フランスはその責任をとることを表明した。
(PIR,7.30/8.8,2003)
 
6年間で人口が12パーセント増
 フランス領域統計局の調べによれば、フレンチ・ポリネシアの人口が24万5516人を記録し、前回調査の行なわれた1996年の統計と比べおよそ12パーセント増加した。また、今回の統計によれば、全人口の75パーセント以上がタヒチ本島とその隣島であるモーレア島に集中している。同人口統計調査は、昨年9月からおよそ400名の調査官によってフレンチ・ポリネシアの全域で実施されていた。
(PIR,9.3,2003)

◆フィジー

労働党入閣問題は依然解決せず
 7月18日、フィジー最高裁は、必要最低議席数(10%)を獲得したすべての政党に内閣参加権があるとする1997年憲法解釈を追認し、ガラセ首相に対し、労働党に議員比率に応じた閣僚ポストを用意するよう命じる判決を下した。
 これを受けてガラセ首相は労働党側に14の閣僚ポストを用意したが、議員比率からすれば17ポストになるはずとする労働党チョードリー代表はこれを拒否、今度は閣僚ポスト数に関する裁判闘争が始まった。9月末時点で労働党は依然入閣せず、上述裁判の結果を待つ姿勢を見せている。
(PACNEWS, 8.8, 2003ほか)

砂糖産業生き残りをかけ、大規模リストラへ
 フィジーでは、国民の約3分の1が砂糖産業と何らかの関わりを持っており、輸出総額は輸出全体の3割以上を占めている。これまでフィジーはEUの補助金を得て、国際価格の2倍以上の値段で砂糖をEU向けに輸出してきたが、2007年にこの制度は打ち切りとなる。このためフィジーでは、砂糖産業のリストラと抜本的構造改革が急務となっている。フィジー政府は砂糖産業の再建計画を策定し2004年1月から実施する予定だが、この計画では、今後5年間で約5000の農場が廃止され、14,500世帯が転業を余儀なくされると見込まれている。8月25日、ビチレブ島北西部のラキラキで演説したガラセ首相は、「砂糖産業はフィジーの主要産業であり、崩壊はさせない。政府は関係20万世帯への支援を続ける」としながらも、「約5000人のサトウキビ農民が失業する可能性があり、年間生産量が1000トン未満の農民には、代替作物の生産を奨励したい」と語った。そして、「2006年までには製糖所施設等の改善と合理化を図って、新たなスタートを切る必要がある」とした。他方、フィジーを含むACP諸国は、砂糖補助金の廃止を10〜15年程度かけて段階的に実施するようEU側に要求中である。
(PACNEWS,8.27/PIR,9.22/23,2003)
 
海外送金が急増
 フィジーの海外送金受け取り額が急増している。昨年は総額1億1600万米ドルに達し、フィジータイムズ紙は、砂糖産業を抜いて、海外送金が、観光業、縫製業に次ぐ第三の外貨収入源になるのも時間の問題だと報じている。フィジー準備銀行のナルンベ総裁によると、海外送金額はこの3年間で急増し、2800万米ドルだった1994年当時の4倍になったととのこと。フィジーからはこのところ毎年5000人以上が海外移住をしており、その多くは専門職・熟練労働者である。
(PIR,9.16,2003)

◆ツバル
 
ソポアガ首相不信任の危機
 ソポアガ首相が不信任の危機に直面している。これは、5月の補欠選挙の結果議会の与野党勢力が逆転したためで、野党側は首相に対し内閣不信任の投票を実施するための議会招集を要求している。これに対しソポアガ首相は、憲法規定上今年11月まで議会招集の義務はないとして、それまでに引き抜き工作を進める作戦をとったが、野党側は8月に「総督には首相に議会招集を命ずる権限がある」との交際(high court)高等法院による憲法判断を勝ち取った。ソポアガ首相はラジオ・オーストラリアのインタビューに対し、「現政権は何一つ失敗を犯していない。野党からの鞍替え議員があるものと確信している」とし、野党側議員への引き抜き工作が順調だと強調しているが、野党側は「こうした工作に乗る同志はいない。首相は姑息な工作をやめて速やかに議会を招集せよ」と圧力を強めている。
(PACNEWS,8.28,2003)
 
◆キリバス
 
トン政権発足
 7月4日、今年2度目の大統領選挙が行われ、即日開票の結果、旧野党BTKのアノテ・トン候補が兄のハリー・トン候補らを破って当選した。
 7月10日に就任したトン新大統領は、テイマ・オノリオ議員をキリバス史上初の女性副大統領に起用、省庁再編を行うなどさっそく「トン色」を打ち出している。また新大統領は、「国民は変革を求めていた」とし、巨額の費用がかかっているエア・キリバス社のATR機運行問題など、前政権の政策の再検討を行いたいとした。
 他方、政権発足当初は少数与党だったBTKは、野党に転落したMMPからの鞍替え議員などを得て過半数を確保した模様で、9月17日には総額は1億1696万1722豪ドルの2003年度予算が議会で承認された。       
(Uekera,7.10/25/9.19,2003)
 
アバイアン島での真珠養殖に期待
アバイアン島で行われていた真珠養殖試験が成功、商品化への期待感が高まっている。8月18日の収穫結果によると、商品化できる真珠の歩留まりが通常2割程度のところ、平均9ミリの真珠が約3分の2から収穫された。今回の試験養殖の中心となった豪州在住の日本人真珠専門家は、「困難を乗り越えて今回の結果を出したことは非常に嬉しい。」と語り、国内では産業化への期待が高まっている。
(Uekera,8.15/22,2003)
 
◆ナウル
 
オフショアバンキング事業をストップ
 ナウル政府は、国際社会から再三指摘・警告を受けていたマネーロンダリング問題に関し、140のオフショア・バンキング・ライセンスをすべて取り消したと発表した。5月末に発足したスコティ新政権は国際社会との協調・協力関係強化を目指し、アジア開発銀行及びオーストラリア援助庁(AUSAID)との関係修復を図るとともに、経済再建に向けた活発な取り組みを開始している。
(TB,6.20-27,2003他)
 
またも政変:レネ・ハリスが3度目の大統領返り咲き
 8月8日、ナウル議会はスコティ大統領への不信任案を可決、同日新たにレネ・ハリス元大統領を新大統領に選出した。ハリス新大統領は3度目の大統領返り咲き。11日に発表された新閣僚は以下の通り。
 
レネ・ハリス・・・大統領、兼外務、公共サービス、リン鉱石信託基金、保健大臣
デログ・ギオウラ・・・副大統領、兼女性問題・グッドガバナンス大臣
マーカス・スティーブン・・・大蔵、教育、金融公社大臣
レミー・ナマドゥク・・・地域開発・産業大臣
ゴドフロイ・トマ・・・司法、漁業・天然資源大臣
(PACNEWS,8.12,2003)
 
中国、ハリス新大統領を歓迎
 7月、スコティ大統領(当時)は、財政難を理由に北京とワシントンの在外公館閉鎖を発表したが、ハリス新大統領は、PIF首脳会議後の域外対話の場で中国代表団に対し、この決定を再検討すると中国側に約束した。これに対し、中国側はハリス新大統領指導下のナウルとの友好関係維持に期待感を示した。
(PACNEWS,8.19,2003)
(追記)その後8月28日、ギオウラ副大統領は国内ラジオ放送を通じて、中国政府が100万豪ドルの無償援助と240万豪ドルの低利子融資に同意したとし、財政難で数ヶ月間未払いになっていた政府職員給与等の一部支払いにめどが立ったと発表した。
 
リン鉱石公社でストライキ
 9月1日から8日まで、ナウルリン鉱石公社(NPC)の労働者は、経営陣退陣と給料支払いを求めてストライキを行った。NPC側によると、現在NPC従業員はキリバス人が約500人、ナウル人が約1100人。また地元住民は、NPC労働者のストライキは前代未聞ではないかと語っている。
 ナウルでは財政難から公的労働者の給料遅配が常態化しており、現在3〜5ヶ月程度の遅配となっている。キリバスのニュースター紙によると、NPCで働くキリバス人労働者は、給与未払いにより食料入手にも苦労する状況で、同様理由で帰国もできないとのこと。
                    (KNR,9.19,2003及び現地取材)
 
ナウルがカトリック司祭の入国を拒否
 ナウル政府は、オーストラリアの難民政策に反対している同国のカトリック司祭の入国査証発給を取り消した。これは、フランク・ブレナン神父に対するもので、同神父は8月4日に査証を得、7日にナウルに向けて出発する予定だったが、発給翌日の5日にナウル政府側から発給取り消しの通告を受けた。ブレナン神父は、ナウルに収容されている難民申請者と同神父との対話を妨害するため、オーストラリア政府がナウル政府に圧力をかけたためだとし、AAP通信に対し、「こうした政府の動きは信教の自由への干渉である」と豪州政府を批判している。
(PIR,8.8,2003)
(関連情報)8月26日にナウル政府担当者に聞いたところ、「現在、ネガティブな報道を目的としたジャーナリストが、観光客を装ってナウルへの入国を図っているため、観光査証の発給も極めて厳格に対応している」とのことであった。
 

◆パラオ

アイバドールに実刑判決が下り国民に衝撃
 1月にアメリカ人法律顧問に暴行をしたアイバドール・ユタカ・ギボンズ南部大酋長が実刑判決を受け、パラオ国内に大きな衝撃を与えた。
 事件は1月7日、コロール州公有地委員会の会議に出席しようとしたアメリカ人のジョンソン・パラオ公有地委員会法律顧問に対し、アイバドールが退去を求め、これを聞き入れなかったジョンソン顧問に激怒したアイバドールが、野球バットで殴りつけたもの。腕を骨折したジョンソン顧問は被害届を出すとともに法に基づく厳罰を強く求めていた。パラオの慣習法ではコロールにおけるアイバドールの権限は絶大であり、国民の間にはアイバドールの命令に従わなかったジョンソン顧問に非ありという声も強かった。7月22日に始まった裁判ではアイバドールは暴行の事実を認め、これを受けて8月18日に裁判所は実質懲役1年(懲役3年うち2年は執行猶予)の判決を下した。
 最高位の大酋長への実刑判決はパラオ国内に大きな衝撃を与え、直ちに伝統首長会議、全国知事会、上下院等が大統領に恩赦を求める決議を採択、また国民の間にも恩赦を求める署名運動が起きて、数日間のうちに4000名以上の署名が集まった。他方、コロール州内にはアイバドールの収監を実力で阻止する動きもあり、事態を重く見たレメンゲサウ大統領は外遊予定をキャンセル、8月22日に特別恩赦の決定を下し、アイバドールの刑務所送りは回避されることになった。
 アイバドールは、恩赦決定に先立つ8月21日、ラジオ、テレビを通じて、アイバドールを支持する国民に謝意を示すとともに、ジョンソン氏の行動についてはもう許したので、同氏とその家族がコロールで安全に暮らすことができるよう協力を求める声明を発表した。
(PH,7.25-28/8.19-21/22-25/26-28,TB,7.18-25/8.22-29/8.29-9.5,2003)
 
アメリカがコンパクト移住条項改定を強硬に要求/NECA交渉も暗礁に?
 アメリカがFSM及びRMIとのコンパクト延長交渉の中で要求していた移住条項改定問題について、6月の年次二国間協議の場でアメリカ側はパラオ政府にも正式に要求を行った。アメリカはFSM及びRMIとのコンパクト延長法案の議会通過のためにもパラオにも同様措置への同意が必要だとして、パラオ側に受諾を強く求めた。要求を受けたレメンゲサウ大統領は、「なぜもっと早くに本件協議の要請がなかったのか」とアメリカ側の対応の遅れに不満感を示し、またパスポート販売は行っておらず、養子によるパラオ国籍の取得も不可能なパラオに対しては見当違い(irrelevant)な要求であり、そもそもパラオのコンパクト見直しまでまだ6年あるはずだとしながらも、アメリカの国家安全保障の一環であるとの説明を受け入れ、シュムル国務大臣を委員長とする検討委員会を設置した。
 検討委員会ではアメリカの要求のうち、@経済的に困難なパラオ人をアメリカ移民局が国外退去処分とすることができる、Aアメリカ移民局が(パラオが和同意を得ず)滞在期間等での制限を加えることができる、とする点に懸念を示す報告を7月末までにとりまとめ、大統領に提出した。
 これを受けてパラオ政府はアメリカ側と交渉を開始、9月にはクアルテイ大統領首席補佐官がワシントンに飛んでケリー次官補と交渉を行った。アメリカ側はFSM及びRMIとのコンパクト延長法案とパラオの問題は切り離すとしながらも、パラオ側の問題提起に対しては「再検討の余地は少ない」と突っぱね、レメンゲサウ政権発足以来最大の対米交渉案件だったNECA(全米電気事業者連合)加盟についても(この加盟が認められるとパラオの国際通話料の大幅引き下げが可能になると見込まれており、パラオ政府はこれまで国務省や内務省の支持を取り付けるなどのねばり強い交渉を行ってきた)本件とリンクさせて検討するとした。
 これに先立ちレメンゲサウ大統領はパシフィック・マガジンのインタビューに答え、「パラオがコンパクトを受け入れた最大の理由の一つが移住に関する特別の権利だ」とし、「アメリカがあたかも敵国のように我々を扱うことに苛立ちを感じる」、「アメリカ側にはミクロネシア地域との長く特別な関係への理解が足りない」と不満を表明している。
 その後アメリカ側は、メリー次官補名で「パラオ人のこれまでの基本的な権利を奪うものではない」とする書簡を大統領に対して送り、パラオ側の理解を求めている。
(PH,6.27-30/7.8-10/7.29-31/9.19-22/9.26-29,Pacific Magazine,Octover,2003)
 
空港滑走路の安全性に問題
先に新ターミナルビルがオープンしたパラオ国際空港で、今度は滑走路の安全性に強い懸念が生じていることが明らかになった。これはアメリカ連邦航空局(FAA)が昨年来指摘していたもの。8月に再びこの指摘をしたFAAは、滑走路の補修等の是正措置を早急に行うよう強く求め、危機感を抱いたパラオ政府、議会もそのための予算措置の検討を開始した。滑走路補修の費用として概算1000万ドルが必要とされており、報告を受けたレメンゲサウ大統領は、現在台湾政府に対して低利子借款供与の交渉を行っていると語った。
(PH8.15-18,19-21,26-28,2003)
 
トシオ・ナカムラ氏、ジョン・ニラケッド氏が相次いで死去
8月9日、ナカムラ前大統領の実兄でパラオ憲法制定と自治政府樹立の立役者のひとりトシオ・ナカムラ氏が死去した。享年64歳。また4日後の8月13日には、1960年代から1980年代にかけてミクロネシア政界で活躍し、その後レメリク初代大統領の暗殺犯として終身刑を受けていたニラケッド元国務大臣が死去した。享年73歳。
(PH, August12-14,2003 TB,August 15-22,2003)
 
川鉄商事と西松建設が未収金回収を断念
 2000万ドルを超える未収金を抱えていた川鉄商事と西松建設が、道路建設未収金の回収を断念する旨の通告を行っていたことが、このほど明らかにされた。
 これは、1980年代にコンパクト資金を当て込み、パラオ政府が支払い保証をする形でマルキョク、オギワル、アルコロン、アルモノグイの各州政府が両社と契約、工事が行われていたもので、コンパクト発効後も支払いが行われず、両社が繰り返し支払いを求めていた問題。
 しかしこのほど州政府当局者が明らかにしたところによると、各州は両社からこれら債権を放棄する旨の通告を2000年に受けているとのこと。両社の未収金は、利子分も含めると2000年段階で3000万ドルを超えていた。
(TB,8.15-22,2003)
 
◆グアム
 
はしか流行を警戒中
 グアムでは8月に5人の陽性患者が確認されたが、公共保健省は流行の恐れはないと述べている。公共保健局はワクチン注射による感染阻止運動をすすめており、9月に新たに5人が感染を疑われていたが、陰性と判明している。陽性患者5人のうち3人はマーシャル諸島経由での感染が確認されている。
(PIR,3/9.25/10.2,2003)
 
カジノ開設のための署名進む
 カジノの是非を問う特別住民投票要請の運動が進んでいる。カジノ賛成派は2490人の署名を集めており、これは先の選挙の投票者数の5.53%。賛成派はグアム議会に請願を提出し、選挙管理委員会が署名数を確認することになる。請願が認められるにはグアム議会で15人のうち8人以上の承認が必要である。
(PIR,8.12,2003)
 
大韓航空のグアム乗り入れが復活へ
 グアム政府は大韓航空との間で新規就航契約を締結したと発表した。これでグアムへの乗り入れ航空会社は、コンチネンタル・ミクロネシア航空、日本航空、日本アジア航空、全日空、ノースウエスト航空、大韓航空となる。大韓航空は週3日、グアム−インチェン直行便を運航し、休暇シーズンの8月には臨時便を運航の予定。同社は1997年8月の事故以降グアムから撤退していた。
(PIR,10.2,2003)
 
カマチョ知事、政府機関統合を発表
 7月30日、カマチョ知事は、政府縮小化、サービス効率化の一環として、グアム政府の48機関を12機関へと統合する法律に近日中に署名すると発表した。同知事は統合化により、15%の公務員が削減できるとしている。
(PIR,7.31,2003)
 
グアム国際空港人員削減
 グアム空港は財政困難により人員削減を進めているグアム空港当局は、7月中に二度目のリストラ勧告をおこなうことになった。6月に最初のリストラがおこなわれており、非専門職やパートタイム労働者46人が退職しているが、今後は専門職の削減も進められる予定。退職者には就職援助金が支払われる。会社側はこのリストラで総給与額(1100万ドル)の3分の1の削減を予定している。
(PIR,7.17,2003)
 
最高裁、債券問題でカマチョ知事を支持
 4月29日、カマチョ知事は、政府支出をまかなうために知事にグアム債券を発行する権限を付与するPublic Law 27-19に署名したが、モイラン(Douglas Moylan)司法長官が、知事は多額の借金をすべきでないとして署名を拒否したため、カマチョ知事は最高裁に権限確認の訴えを起こしていた。この訴えに対し7月23日、最高裁は、基本法のもと知事には2万1800ドルの債券を発行する権限があるとする判決を下した。
(PIR,7.24,2003)
 
グアムとCNMIが米軍支持
 8月8日、グアムのカマチョ知事と北マリアナのババウタ知事はグアムにおいて、太平洋におけるアメリカの軍事プレゼンス拡大を、マリアナ諸島地域として支持することを確認した「白書」に署名した。白書では、軍が地域におけるプレゼンスを拡大した場合の両地域に可能な役割についても言及している。
 カマチョ知事は、7日付けのババウタ知事への手紙で、「アジアの情勢変化の中で、人口密集地帯から数時間の場所に位置するグアムとサイパンは、その戦略的重要性が今後も継続するだろう」と述べている。
 更に知事は、軍人は個人で毎日何百ドル、入港中は全体で1日百万ドルに近い経済貢献をすると述べ、グアムには4500人近い海軍と1829人の空軍が駐留しており、彼らが地元政府に納める所得税は毎年5,000万ドルにもなることを指摘、両地域経済に対する軍の重要性を啓蒙し、軍当局に地域を売り込むことについて団結すべきであるとしている。

 また両地域の企業経営者や議員たちも米軍プレゼンス拡大を歓迎しており、その旨を軍当局に伝える意向である。

 (PACNEWS,8.11/PIR,8.11/8.19,2003)

◆北マリアナ諸島
 
消費者物価指数急上昇
 2003年第二四半期の北マリアナの消費者物価指数は、昨年の同時期と比べて17.8%上昇した。消費者物価指数は四半期ごとに発表されるが、10%を超える上昇は初めてのこと。ササモト(Diego Sasamoto)中央統計局長は、この原因として医療費、娯楽費の上昇を指摘、特に歯科治療費の大幅な上昇が大きいと述べた。歯科治療費は口内診療が5ドルから30ドルへ、抜歯が40ドルから164−265ドルへと値上げされている。
(PIR,7.10,2003)
 
チャモロ語をアメリカ先住民言語に認定
 ヘンリー・サブラン前教育コミッショナーは、米国政府がチャモロ語を正式にアメリカ先住民言語に認定したと述べた。アメリカ先住民言語にはハワイ語、インディアン語、サモア語が認められている。この認定によりチャモロ語は、アメリカ先住民言語法で保護されることになる。北マリアナでは信託統治下の1971年から英語とチャモロ語とのバイリンガル教育がおこなわれてきたが、サブラン氏は今回の措置により、学校教育でのチャモロ語の活用が拡大するであろうと述べている。
(PIR,7.17,2003)
 
公共事業公社、政府機関に警告
 7月3日、コモンウエルス公共事業公社(Commonwealth Utilities Corp.)は料金未払いの12の政府関係機関に対し、14日までに支払がない場合は電力、水道の供給を停止すると警告したことを明らかにした。警告を受けたのは財務局など6部局、5機関、1大学。最大の未払い機関は公立学校制度局(Division of public school system)で約154万ドルを滞納、次いで北マリアナ大学が約92万ドルなどとなっている。
(PIR,7.14,2003)
 
北マリアナの自由連合国民減少
 2003年国勢調査(暫定値)で、北マリアナ在住のFSM、パラオ、マーシャル諸島国民が減少しているとの結果が出た。アタリグ(Fermin Atalig)商業局長は「これは自由連合国民がより良い仕事を求めてグアムへ移動しているためだ」とし、「自由連合国民の受け入れ数はコンパクト・インパクト補償金(ハワイ、グアム、北マリアナで1500万ドル)の配分を左右する」と懸念を表明した。
 2000年の調査による自由連合国民数は、マーシャル諸島112人、パラオ1685人、FSM2294人であった。
(PIR,7.31,2003)
 
4月−6月期、企業総収入アップ
 商務省の最新のデータによると、イラク戦争やSARSの影響にもかかわらず、4月から6月の北マリアナ企業総収入(total business gross revenues)が22%アップで1億ドル近くになったことが判明した。この数字について、経済開発局のサントス(James Santos)氏は、イラク戦争とSARSのせいで逆に住民が旅行を控え、国内で休暇を過ごしたことで国内需要が増加したためと分析している。予想外の国内消費に支えられ総売上額は5億4360万ドルであった。
(PIR,8.14,2003)
 
北マリアナ、米国に新ビザ制度の免除を要求
 アメリカ政府が7月にスタートさせたトランジット客にも査証取得を義務づける措置について北マリアナ政府は、北マリアナ領域内外国人や非定住労働者が米国ビザなしでグアム空港を乗り換えのために通過することを認める特例措置を米国政府に申請した。アメリカの新規制は、テロリストの米国内侵入阻止のための措置だと言われているが、北マリアナで働くフィリピン人、中国人労働者は直行便を持たないため、グアムで乗り換えねばならず、今日の措置により航空会社と北マリアナの企業は数百万ドルの損失を被ると見込まれている。新規則ではグアム国際空港の乗り換えラウンジに入れるのは米国民、適法なビザを持つ者、合法的永住者もしくは日本のようなビザ免除プログラムの加盟国に限られる。サラス(Carlos H.Salas)コモンウエルス港湾局長は、この申請が許可されない時は、外国人労働者がビザなしでグアムを通過するための新たな提案をすると述べた。
(PIR,8.6,2003)
 
環境局が水質調査を開始
 米国の環境保護庁(EPA)によりサイパンの地下水汚染が指摘されてから3年、このほど北マリアナ環境局はようやく独自の水質調査を始めた。ジョン・カストロ環境局長によると、衣料縫製工場、ランドリーなどで廃出される人体有害物質と、2000年のEPAの調査で確認された地下水汚染物質との因果関係を調査する予定。2000年調査では30の対象企業のうち半数が高レベルのタリウム、塩化ビニールなどの有害化学物質を廃出していることが判明し、環境局の無策ぶりが批判されていた。北マリアナでは廃水管理のずさんな企業が多く、8月にもランドリー工場(L&T Group) が未処理汚水を垂れ流したため湿地帯が泡だらけとなり、資源管理局から二度目の罰金措置(1万ドル)を受けている。 
(PIR,8.25/9.10,2003)
 
海底所有権訴訟で敗訴
 8月7日、米国連邦地方裁判所は北マリアナのすべての海底(Submerged Land)の所有権は米国にあると判決を下した。北マリアナは米国による軍事利用に関して、1976年協定には海底は含まれていないと主張していたが、同連邦地裁マンソン(Alex R.Munson)裁判長は、「米国は北マリアナの沿岸から沖へと続く水域、土地、鉱物、その他の資源について恒久的権利を有する」との判決を下した。この判決に対し、21日、北マリアナ司法局はこれを不服として米国控訴裁判所に上告した。北マリアナ諸島は1997年、1999年にも同様な所有権確認の訴えを起こしている。
(PIR,8.24,2003)
 
アナタハン火山続報
 緊急管理局と米国地質研究所(US Geological Survey)は火山灰で埋まったアナタハンの観測所にかわり、アナタハン北隣のサリガン島(Sarigan)での地震観測を開始した。アナタハン火山は微弱ながら依然として活動が続き、ガスと蒸気を噴出しているが、今のところ再噴火の兆候はない。
 一方、タイサカン(Valentin Taisacan)北マリアナ市長は教育局に対し、アナタハンの学校移転先としてパガン(Pagan)島を要請した。しかしパガンも1981年に噴火し数百人の住民が他島に避難した経緯があるため、移転には慎重な調査が必要である。
(PIR,7.3/8.20/9.15/9.24,2003)
 
アタリグ上院議員、量刑確定
 8月14日、連邦地裁において、マンソン(Alex Munson)裁判官は、リカルド・アタリグ(Ricardo S.Atalig)上院議員に対し、1件の詐欺共謀罪と26件の詐欺罪で有罪を宣告し、5年3ヶ月の禁固刑に加え、約4万ドルの賠償金と1万ドルの罰金、2700ドルの特別賦課を命じた。アタリグ議員はクルツ(Jose Dela Cruz)上院議員及びその娘と共に、昨年12月に横領の疑いで告発され、4月に連邦陪審院で有罪の評決を受けていた。
上院議員2名がこの事件の当事者であるため現在、上院議会は実質7名で運営、4名で多数派 (「new majority」)が形成されており、この状態で議決がすすむことの合法性を問う訴えもおきている。
(PIR,7.3/8.15/9.13,2003)
 
コンパクト・インパクト補償金、3000万ドル上院通過
 米国上院の予算委員会で、3000万ドルの予算が可決された。このコンパクト・インパクト補償金は、ハワイ、グアム、北マリアナが自由連合国民を受け入れた際の医療、教育、公共サービス費用として支払われるもの。ブッシュ政権は1500万ドルを提示していたが、ハワイ州選出議員は、この額は自由連合国民が、ハワイの1つの病院でかかる医療費にも足りないと指摘していた。
(Pacific Islands.cc,9.19,2003)
追記----その後これは下院で否決された。
(PIR,9.29,2003)
 
北マリアナの外国出生者、過半数超える
 北マリアナの2000年米国国勢調査によると、総人口8万人のうち外国人労働者が3万5000人以上を占めることが明らかになった。
 北マリアナに住む域外の出生者は4万4400人で、その内訳は、サイパンに4万880人、テニアンに1956人、ロタに1563人、北方諸島に1人となっている。目的別にみると、労働者が3万5444人、配偶者等家族が5720人、宗教関係が少なくとも2000人、自給自足生活が84人、就学が938人、移住が133人、その他の理由が1878人。労働者については、その93%にあたる3万2967人がサイパンに集中している。
(PIR,10.5,2003)
 
難民対策にアメリカと協力協定
 ババウタ知事とコーエン(Cohen)内務省副次官補は移民問題対処と人の密輸防止のために、両政府が協力することを定めた協定(Memorandum of agreement) に署名した。
 最も重要なことは、北マリアナからの国外退去に直面している外国人について、合衆国の難民保護規定を適用せず北マリアナ独自の保護規定に則って対処するとしたことである。
 北マリアナはこの協定により、人道上の国際条約の枠組みの中に入ることになり、今後アメリカの支援を受けながら手続きを進める予定である。
(Saipan Tribune,9.15,2003)

◆ミクロネシア連邦
 
新議事堂開館式
 7月10日、シグラー(Rensley Sigrah)知事とコスラエ住民が新しい州政府庁舎(State Capitol Complex)の開会を祝った。総工費約70万ドルのうち半分は州予算で、残りは米国内務省の援助でまかなわれた。知事はこの新庁舎完成により行政各分野が統合整理され、効率化が進むだろうと述べている。
(PIR,7.31,2003)
 
議会、大統領の閣僚指名を2人否決
 FSM議会は、第13回議会特別会期において閣僚人事の審議を行い、ウルセマル大統領の指名した閣僚と外交代表のうち、エリエイサー駐日大使候補と閣僚候補2名を否認した。
 承認された閣僚、外交代表は以下の通りである。
外務大臣              セバスチャン・アネファル(Sebastian Anefal)
同 副大臣                   ローレン・ロバート(Lorin Robert)
財務・行政大臣                 ニック・L・アンドン(Nick L.Andon)
保健・教育・公共サービス大臣      ジェファーソン・B・ベンジャミン博士
                            (Dr.Jefferson B. Benjamin)
運輸・通信・インフラ大臣         アキリノ・H・スサイア(Akillino H.Susaia)
公選弁護人                   ベアウレン・カール(Beauleen Carl)
郵政局長(Post Master General)     ベスウエル・ヘンリー(Bethwel Henry)
(pacific Islands.cc,8.28/9.6,2003)
 
11月にポンペイ州選挙
 ポンペイ州選挙管理委員会は、11月に予定されている知事、副知事、州議員選挙候補者を発表した。知事には現職のデビッド知事以下3人が、副知事には6人が立候補している。知事、副知事に当選するためには、全投票数の過半数以上の得票が必要となる。選挙管理委員会に登録されている有権者は現在2万5716人。
(PIR,10.1,2003)
 
◆マーシャル諸島
 
日本、マジュロの病院改修工事に520万ドル供与
 4日、ケサイ・ノート大統領と池田臨時代理大使は、新しい病院施設建設のための無償資金協力に調印した。総額520万ドルで年内にも着工の予定。
(PIR,8.4,2003)
 
チャールズ・ヘンリー判事解任へ
 マーシャル諸島議会は、のチャールズ・ヘンリー高裁長官(米国籍)の解任を要求。
 フィリッポ(Witten Philippo)司法大臣は議会にヘンリー高裁長官の解任を求める決議案を提出した。ヘンリー判事は昨年暮れに旅費の横領で告発され審理中で、現在、カリフォルニアに帰還を許可されている。8月中旬の公判には健康問題と弁護士を雇えないことを理由に延期を申し入れたが、ニラケルソン(Arther Ngraklsong)最高裁長官は理由に信憑性がないとして却下、しかしヘンリー判事は出頭せず、検察側は身柄の拘束も検討している。
(PIR,8.12/9.8,2003)
 
はしか大流行
 7月末に21人のはしか患者が確認されて以来、マーシャル諸島ではしかが猛威をふるっており、9月第一週には患者数が438人(及び感染の疑いのある者191人)となった。
 政府は8月上旬から感染拡大阻止のため、島外への渡航を一時禁止し(その後渡航禁止措置は解除されたが、渡航者には政府発行のワクチン接種証明書提示が義務付けられた。)30歳以下の住民に順次ワクチン接種を行い、学校の新学期開始を遅らせるなどの対策をとってきたが、流行は抑えられなかった。
来島中の太平洋諸島保健協会(Pacific Island Health Officers association)のチェイン博士(J.P.Chaine)は流行の原因として、毎年行われていたワクチン接種が人口の85%にとどまり、免疫を持っていない国民が増加したこと、国民の多くが重症のビタミンA不足で抵抗力がなかったことを挙げている。マーシャル諸島ではしかが流行したのは1988年以来のことで、ここ5年ははしかは発生していなかった。
(PIR,7.31/8.1/8.7/8.15/8.22/8.29/9.4,2003)
 
会計監査、大使館のずさん会計を指摘 
 2002年度会計監査の結果、在外公館で現金勘定が合わないことが判明した。指摘されたのは在ワシントン、在フィージー、在東京、在ホノルル、在NYの各在外公館。報告では、このような不正確な会計は国家財産の着服に繋がると指摘し、在外公館の会計規則の必要性を提言、ショニバー(Saeko Shoniber)財務大臣も善処したいとしている。
(PIR,9.8,2003)
 
クワジェリン基地貸与交渉膠着状態
 コンパクト交渉の鍵を握るクワジェリン基地問題が難航している。米国は83年間(2066年まで)の使用期間延長を希望し、土地所有者に使用料として年1500万ドル(現在1130万ドル)、開発基金として510万ドル(同190万ドル)を提示しているが、土地所有者側は年1910万ドルを主張し続けている。
(PIR,8.18,2003)
 
養子協会設立
 11日、政府は養子協会(Central Adoption Authority)の設立を発表した。10月1日よりマーシャル人の子供の養子縁組に関わるすべての関係者の登録、資格付与、監視等を行う。
 マーシャル諸島では1990年代半ばから始まった米国人里親との養子縁組が年々増加し、毎年200人もの子供が養子にだされている。この世界一の養子率の原因として、マーシャル人母親の養子縁組に対する認識不足(養子は一次的なもので子供はそのうち帰ってくると考えている)と、マーシャル諸島の養子縁組制度(高裁が判断)を通さずに、養子縁組を斡旋する米国のビジネス機関が増えたことにある。これらの養子ビジネスは積極的に母親に養子をもちかけ、一人当りにつき2500ドルを儲けていた。この状況に対し政府は法規制に乗り出し、今後マーシャル人の養子縁組は養子協会の監視、許可のもと正式な高裁手続きを経てのみ行われ、養子の勧誘や金銭授受は禁止されることになる。
(PIR,9.8,2003)
 
新生児の梅毒感染が急増
 マーシャル諸島保健局は新生児の梅毒感染者の増加を懸念している。マーシャル諸島では、年間に誕生する約1500人の新生児のうち10%が先天的に梅毒に感染している。これは母親が感染者であることを意味しているが、半数は出生前に病院で診察を受けておらず、母子ともに危険が大きい。保健局は妊婦に対し、マジュロ病院での血液検査を呼びかける等対策にのりだしている。
(PIR,9.23,2003)
 
新コンパクトまで暫定コンパクト
 マーシャル諸島、FSMと米国間の現行コンパクトは10月1日に期限切れとなるが、交渉中の新コンパクトはいまだ米国議会の承認を得られないままである。
 そのため新コンパクト締結までの暫定措置として、現行コンパクトのもとで現在のレベルの援助が10月31日まで継続されることになった。
 9月25日米国議会は継続措置を可決。マーシャル議会も29日、この暫定コンパクトを承認した。
(PIR,9.3/9.25/10.1,2003)
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
【執 筆】
小川和美(トピック、地域、フィジー、ツバル、キリバス、ナウル、パラオ)
玉井 昇(ニューカレドニア、サモア、アメリカンサモア、トンガ、ハワイ州、ニウエ、クック諸島、フレンチポリネシア)
山桝加奈子(グアム、北マリアナ諸島、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島)
奥迫 新(パプアニューギニア、ソロモン諸島、ヴァヌアツ)
【協 力】
Kentaro Ono(在キリバス) 

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